スポーツ用品大手のデサントの経営陣が6月予定の株主総会を経て刷新される。筆頭株主の伊藤忠商事が敵対的TOB成立で関与を強めるが、騒動の発端となったデサントの課題を解決できるかは不透明だ。(ダイヤモンド編集部 重石岳史)
「このままでは第3次経営危機に陥る」。伊藤忠商事の岡藤正広会長CEOは昨年、デサントの経営状況について周囲にそう語ったという。
岡藤氏が言う危機の1度目は1984年、ゴルフウエアブランド「マンシングウェア」の過剰在庫により大規模な赤字を計上したこと。そして2度目は98年、売上高の4割を稼いでいた独アディダスとのライセンス契約が打ち切られた、いわゆる“アディダスショック”だ。
74年の入社以来一貫して繊維畑を歩み、過去のデサント再建にも関わった岡藤氏の積年の“執着ぶり”がうかがえる。とはいえ現在のデサントが、過去のショックに匹敵するほどの危機的状況にあるかというと、少なくとも近年の決算上からは見えてこない。
2018年度の連結業績予想は、売上高が前期比5%増で過去最高の1480億円、当期純利益が同13%増の65億円(図1)。アパレル業界の構造不況を鑑みれば、むしろ上出来といえる成績だ。創業家の石本雅敏社長も昨年6月の決算説明会で「増収増益を果たした」と自信を示していた。