新制度では、最高層であるMg層に上がると、もっと大きく可能性が開かれる。行内での位置付けが高く、これまでは40代半ばまで就くことができなかった法人営業部の部長の座に、制度上なんと37歳で就けるようになるのだ。夢の“一足飛び”が現実の目標として立てられるようになるわけである。

 目指したのは、できる行員が正当に評価され、適切に登用される仕組みの構築だ。給与額も年功より「どんな仕事をしているか」「どんな成果を挙げたか」に重きを置いて算出するよう変更する。

 中には、旧制度比1割増しの賞与を手にする行員も出てくるというが、裏を返せば、職務内容に応じて給与が下がる行員も出てくるということだ。まさに実力主義への軸足変更である。

 ただ、邦銀界にとってはド級の改革でも、最先端のテック企業の人事制度と比べると、彼我の差は歴然としている。

 三井住友銀行には、抜本改革を経ても残される2種類の“壁”がある。一つは役員への壁だ。実は今回の改革では、役員への若手抜てきの仕組みまでは議論されていない。役員人事は指名委員会の意向も絡むが、総合職で若手登用を積極的に行うなら、役員への門戸も広く開かれるべきだろう。

 そしてもう一つは階層の壁だ。階層の完全撤廃は新制度の策定時に検討はされたものの、結局は見送りとなった。

 振り返れば、旧制度で階層を六つも設けたのも、「同期の数が多く、ポストになかなか就けずジレンマを抱える世代にステップアップ感を持ってもらうためだった」(三木健弘・三井住友銀行人事部副部長)。今回も、階層自体が持つ権限や名称が行員のモチベーションにつながると結論付けた形だ。

 邦銀の人事部が最も恐れるのは、いつの時代も「人事部の失策による、大量に抱える行員のやる気喪失」(メガバンク人事関係者)だ。三菱UFJ銀行も三井住友銀行と同様に総合職の人事制度を抜本改革し、今年4月から運用を始めているが、同行もやはり階層の完全撤廃は行っていない。