自分にとって本当に大切なことに気づく
――重要なことに集中する「アナログの避難所」

 バレットジャーナルは計画を立て、その経過をたどり、記憶を維持するうえで役に立っただけではなく、彼女の創造性を高め、傷を癒やし、彼女を引っ込み思案からも解放した。そしてメンバーが励ましあって協力するバレットジャーナルのコミュニティーの一員にした。

 このような体験をしたのは、彼女だけではない。僕自身もまた創意工夫に富み、つらいことがあってもへこたれず、勇気あるバレットジャーナル・ユーザーのみなさんから刺激を受けてきた。僕のノート術を活用し、それを自分の状況に合わせてカスタマイズしているみなさんからインスパイアされたこともあり、僕は本書(『バレットジャーナル 人生を変えるノート術』)を執筆しようと思い立ったのだ。

 あなたがバレットジャーナル・ユーザーであろうと、まったくの初心者であろうと、大丈夫。本書は、このデジタル時代に自分の居場所を見つけようと苦戦しているすべての人に向けた本だ。

 本書で説明しているシンプルなツールやテクニックを活用すれば、頭のなかを整理できるだけではなく、日々の暮らしに淀みがなくなり、方向性がはっきり見えてきて、集中力も高まる。頭のなかが整理されればたしかに気分は上向くけれど、それだけに価値があるわけじゃない。自分の深いところに眠っている、もっと価値のあるものが浮上してきて、目に見えるようになることが肝心なのだ。

 ADDだから、自分はほかの人たちとは違う。僕はずっとそう考えてきた。ところがバレットジャーナルのコミュニティーのおかげで、なにかをするときには忙(せわ)しく取り組まずにはいられないというこの症状は、いまのデジタル時代ではありふれた病であることがわかってきた。その病とは「自己認識の欠如」だ。

 歴史上、もっとも他人とつながることができる現代において、僕たちは「自分自身」とふれあう時間を急速に失いつつある。終わることのない情報の洪水に圧倒され、過剰な刺激を受けているのに落ち着かず、頭を使いすぎているのに満足できず、最先端の情報にアンテナを立ててはいるのに燃え尽きている。テクノロジーが生活の隅々にまで浸透し、常に気を散らすものが生まれている。

 だからこそ僕が編みだしたノート術は、本当に重要なことに集中し、自分にとって大切なこととはなにかを考えるうえできわめて貴重な「アナログの避難所」を提供している。いまでは数えきれないほど大勢の人たちが、自分の人生を自分でコントロールする力を取り戻すうえで、バレットジャーナルが大きなカギを握っていることを実感している。