ゴーン氏が作った日産搾取システム

 今回の大減益決算によって、日産と大株主である仏ルノーとの関係はどう変わるのだろうか。経営統合を目論むルノーに付け入る隙を与えるきっかけになるかもしれない。

 まず、これまでの両者の関係を振り返っておこう。

 1999年に日産を救済した経緯から、ルノーは日産株式の43.4%(議決権あり)を保有する筆頭株主となっている。一方の日産は議決権なしのルノー株式15%を持つ。

 このいびつな出資関係とゴーン氏の存在が、20年の長きに渡り、ルノーの業績や懐を潤わせてきたといっても過言ではない。

 第1に、日産はルノーの業績に大きく貢献してきた。

 ルノーが「日産からの持ち分利益」を計上できるためで、例えば、18年12月期のルノーの純利益33億200万ユーロのうち、45.7%に相当する15億900万ユーロは日産の貢献分である。

 13年12月期に至っては、日産の持ち分利益の計上によって、ルノーの赤字をカバーし黒字にできたこともあったくらいだ。

 第2に、配当収入である。これだけの業績不振にもかかわらず、日産は19年3月期の配当金を1株当たり4円増配の57円に設定している(通期)。配当性向は69.9%という異常な高さである。

 期末時点でのルノーの日産の保有株数に配当額を掛けて受取金額を算出したところ、19年3月期までの20年間の受取配当金の総額は9718億円(!)と1兆円に迫る。ルノーの日産株式購入額である7094億円を優に超えている計算だ。

 競合の自動車メーカーと比べても、日産の配当性向は高い。今回と同様に、日産が業績不振の局面であってもなぜか配当金を増額させることもあった。この配当金引き上げシステムは、日産とルノーのトップを兼ねていたゴーン氏が、業績停滞期が長く続いたルノーのために、そしてルノートップである自身のために築いたものだ。

 これを、ルノーによる日産搾取システムと言わずして何と言えばいいか。

 ところが、である。日産の業績急ブレーキは、ルノーに「日産搾取システム」の綻びを実感させることになりそうだ。

 まず、日産の業績不振が続けば、ルノーの業績への寄与度もグンと落ちる。

 そして、配当収入についても潤沢なキャッシュフローを生む“打ち出の小槌”ではなくなりつつある。ゴーン氏の退任が大きく影響しているのだろう。来期20年度3月期には、配当金は57円から40円へ大幅に引き下げられたのだ。日産は、「すべてはルノーのために」という配当政策をやめることにしたのだ。

 ルノーは、ゴーン氏の失脚を境に、「日産搾取システム」のグリップを握れなくなってしまったのである。