国内の既存事業は、売り上げはともかく利益はまだまだ成長させることができる。たとえばビール類についても、既存のビール市場は縮小傾向ですが、その中にはクラフトビールなどの成長領域もある。新たな新ジャンル商品の開発も、コスト削減だってできる。今回キリンはキャッシュリッチな体制に戻ることができましたが、そのキャッシュの多くはこれからは既存事業に投資します。

 ライオンは乳業事業を売却しますが、一方(中小企業が多い)クラフトビールでは世界でも有数の海外展開を行う企業で、そのビジネスは「ライオンモデル」などと呼ばれているほどです。同社をコアにクラフトを伸ばせる可能性は十分にある。

未病領域を重点事業に

――次期中期経営計画では「未病」領域を重点事業として掲げました。

 これまでのキリンの中核事業は食品・飲料と(協和発酵キリンが手掛ける)医薬です。しかし、食品については世界の胃袋が縮み、また決まったブランドの酒が大量に飲まれるような時代ではなくなっている。またWHOが飲酒に対してきわめて厳しい視線を向けている。医薬に関しても、医療費が国家財政を圧迫することがどの国でも問題になっている。せっかく開発した新薬も、しばらく経てば薬価改定が行われジェネリック薬品が出る。どちらの環境も厳しくなってきている。

 一方で、人生100年時代といわれる中で、病気にならずにどう生きていくか、ということには社会課題と市場のニーズがある。つまり、「病気にならない」ための事業、未病と呼ばれる医と食をつなぐ領域です。キリンにそれができるのかって?できるんですよ。

 まず、キリンはもう数十年免疫についての研究をしてきました。先日協和発酵キリンから発売された、遺伝性クル病治療薬「クリスビーダ」を開発したのは、この分野の研究を30年間かけて行っていたキリンビール出身の社員です。免疫研究に関しては非常な強みと歴史を持っており、ここを突き詰めることで未病の領域での事業も展開できます。