ロシア製通信アプリに覆面……
「雨傘運動」から進化した抗議運動

 香港の抗議行動の「進化」には、私も正直、舌を巻いた。まず、デモに参加する若者たちが、自分たちの身元が特定されないような策を徹底していることに驚いた。

 抗議行動に参加する多くの若者たちが、ロシア人が作った携帯電話用の通信アプリ「テレグラム」を使用しているという。最大20万人のグループを作ることができる上に、メッセージが暗号化されて送られるため、保秘性が高い。

 このような通信アプリを通じて情報を交換することで、若者たちは警察など治安当局の追跡をかわすための共通の対策を取ることができている。例えば、香港には何千台もの監視カメラが設置されているが、それらに顔が映らないように、マスクやヘルメット、ゴーグルを着用している。また、地下鉄やバスを利用してデモに参加する際、当局による追跡が容易なICカードを使わず、現金で片道切符を購入している。これらの対策を、若者たちは一体となってやっているのだ。

 そして、通信アプリを通じての情報交換とネットワークを活動のベースとしているので、リーダーが表に出てこないことも今回の抗議行動の特徴だ。そのため、香港政府は誰と交渉したらいいかが分からず、事態を収めるきっかけをつかめないままデモの拡大を許すことになってしまった。

 これも、「雨傘運動」で学生リーダーが「公序を乱す行為、または人々を扇動する行為」を行ったという漠然とした罪で逮捕され、実刑判決を受けたことを教訓としている。だが、リーダーが表に出てこないからといって、リーダー不在ということではない。少なくとも、抗議行動を動かすコアな若者たちの連携があるのは間違いない。