部下の心の中にもある「甘え」の心理と
「甘え型攻撃性」

「甘え」の心理によりイライラするのは上司ばかりではない。実は部下の心の中にも「甘え」の心理が潜んでおり、上司がわかってくれないためにイライラすることが少なからずある。

 例えば、異動希望を出した際、上司がこちらの希望を汲み取って人事異動を取り計らってくれるはずだと信じていたところ、そうならなかったためイライラした人がいる。その人に、「部署の希望を上司にはっきり伝えていたのか」と尋ねてみると、「面と向かって話したことはないけど、日頃の雑談で自分が何をやりたいかはわかってくれているはずだ」と言う。

 ところが現実には、上司は部下を何人も抱えているわけだし、部下1人ひとりの心の中まで的確に把握できるわけではない。それならば、はっきり伝えておけばよいわけだが、それをしないまま勝手に期待してしまうわけだ。そして、期待はずれに終わると「なんで?」と被害者感情が芽生え、イライラしてしまう。

 これはまさに「いちいち言わなくてもわかるはず」といった心理的一体感を前提にした「甘え型攻撃性」といえる。

 実際、Bさんと話すと、上司のAさんに対する不満は、指示の問題だけにとどまらない。自分の働きぶりを評価してくれないことも問題であることがわかった。

指示下手な上司と指示待ち部下、互いのイライラに潜む「甘え」の心理本連載の著者・榎本博明さんの
『「上から目線」の構造』
が好評発売中!
日本経済新聞出版社、225ページ、850円(税抜)
「あの上から目線にイラッとくる」という部下の声をヒントに、扱いにくい部下の深層心理を解剖し、今どきの部下がなぜ扱いにくいのか、どうしたら上手くかかわっていけるのかについてわかりやすく解説。

 人から頼まれると嫌と言えない性格のBさんは、先輩や同僚が忙しい時に頼まれて手伝うことがしばしばある。自分が担当している仕事以外にも頑張っており、それによって部署の仕事が回っているのだから、そこのところを上司のAさんにもきちんとみていてほしいし、評価してほしい。でも、Aさんが見てくれている感じがなく、ねぎらいの言葉さえもない。 

 上司にアピールが上手い部下であれば、自分の貢献をさりげなく伝えることもできるが、Bさんは真面目な上に不器用なところがあり、アピールが得意ではない。そして「言わなくてもわかってもらえるはず」「きっと見ていてくれるはず」といった期待を抱いて、評価されることをひたすら待っているのだ。

 このようなすれ違いは、どの職場にもみられる。
 
 人は誰しも、つい自分の視点だけでものごとを評価しがちだ。

 ゆえに、「なぜわかってくれないんだ」「なぜいちいち言わないとわからないんだ」とイライラしているのは自分だけではない、相手もそうかもしれないと想像力を働かすことが大切なのである。

 そこに気づくことができれば、日頃感じているお互いの不満が解消され、気持ちよく仕事ができる職場環境にしていくことができるのではないだろうか。