特集 CASEの幻想 エンジンの逆襲2

脇役扱いされていた「エンジン」の重要性を見直す「CASEの幻想 エンジンの逆襲」特集の第2回。トヨタ自動車の「プリウス」と並びハイブリッド車(HV)ブームの一翼を担ったものの、販売台数では完敗を喫していたホンダのHV「インサイト」が新型パワートレイン「i-MMD」を引っ提げて帰ってきた。ホンダのHVに黎明期から関わり、i-MMDを完成させた技術者に話を聞いた。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)

 2005年に本田技術研究所にHVの専門家チームが発足した。ホンダは当時、トヨタ自動車に次ぐHVメーカーだったが、販売実績では苦杯をなめさせられてきた。

 それまで各部署に分散していた専門家が結集して立ち上がったチームの使命は、売れるHVのシステムを開発してトヨタに一矢を報いること。メンバーに加わった森下尚久と仁木学は打倒トヨタに燃えていた。

 2人ともホンダの初代「インサイト」のHVシステムから電動車の開発に関わった。森下は「HVでトヨタに負け、じくじたる思いを抱いていた。いつかリベンジを果たそうと思っていた」と専門家チームに入った際の高揚感を語る。

エンジンの逆襲#2 写真2Photo by Hirobumi Senbongi

 ホンダのHV開発は試行錯誤の連続だった。搭載するモーターの数だけでも、1個になることもあれば3個に増えることもあり定まらなかった。

 断続的にHVを発売していたが、トヨタの「プリウス」のようなヒット作は生まれなかった。とりわけ2代目「インサイト」への期待値は高かっただけに、プリウスに敗れたときは技術者が批判にさらされた。

 こうした逆風の中ではあったが、専門家チームのメンバーには、理想的なパワートレインの姿がおぼろげながら見えていた。エンジンの回転力で発電用モーターを動かし、生み出した電力で駆動用モーターを回して車を走らせる――。

 ここまでは日産自動車の「e-POWER」(特集第1回記事参照)と同じだが、ホンダには、モーターが苦手とする高速領域は、モーターを回さずエンジンのみで走行させるという理想があった。

 開発に成功すれば、モーターの弱点をエンジンがカバーする、海外でも売りやすい基幹パワートレインになるというわけだ。

 理想を形にするべく開発が始まったが、モーターとインバーターをそれぞれ二つずつと、バッテリーなどを限られたスペースに収納するといった難題が幾つも立ちはだかった。