脇役扱いされてきた「エンジン」の重要性を見直す「CASEの幻想 エンジンの逆襲」特集の第4回――。SUBARU(スバル)は水平対向エンジンなどの伝統を生かしつつ、手頃な価格でハイブリッド車を用意。遅れていた環境対応を加速しようとしている。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)
SUBARU(スバル)は日系自動車メーカーの中でも独自のポジションを占める。なぜなら、パワートレインが伝統的に“孤高”を持する存在だからだ。
そのスバル車の電動化の軸になるパワートレインの特徴は「e-BOXER」という名前に端的に表れている。スバル車の代名詞である「ボクサーエンジン」をモーターがアシスト(電動化)するものだからだ。
ボクサーエンジンは水平対向エンジンともいわれる。一般的なエンジンのピストンは上下に動く。それに対しボクサーエンジンは、ボクシング選手が互いにストレートのパンチを打ち合うようにピストンが水平に動く。そのため車が低重心になり、縦の振動が少なくなる。
エンジンをはじめとした車の主要部品を左右対称(シンメトリー)になるように配置して走りを安定させるのもスバルの特徴だ。
水平対向エンジンとシンメトリー構造という二つの伝統を受け継ぎ、できるだけ従来のガソリン車の機構を活用して価格を抑えたのがe-BOXERだ。
e-BOXERはSUV「フォレスター」に搭載されているが、同車種のガソリン車とe-BOXER搭載車との価格差は7万円しかない。他社のハイブリッド車(HV)がガソリン車より40万~60万円も割高なのに比べれば破格の安さだ。しかも、e-BOXER搭載車にはドライバーの顔認証機能まで付いているのだ。
この価格で、ガソリン車より燃費が16%良くなって18.6km/l(JC08モード)を実現しているので、普通なら経済的メリットを前面に出してパワートレインをPRするところだが、スバルは「孤高」の価値を追求しているのでそうした売り方はしない。
スバル車は四輪駆動を基本としているが、これを二輪駆動にするだけで燃費は改善する。あえてそれをしないスバルは燃費より走りに重きを置いて車を開発しており、e-BOXERにおいても「しかり」というわけだ。
そのスバルらしさはe-BOXERの開発でもいかんなく発揮された。