この、「野党の政策を自分のものにしてしまい、それに予算をつけて実行することで、野党の支持者を奪ってしまう」という自民党の強さは、「55年体制」以来の伝統的なものである。かつて1970年代に社会党など野党が「福祉」や「環境」を訴え始めた時、自民党はすかさずそれを奪い、予算を付けて現実の政策とした。そして、「環境」や「福祉」を支持する都市部の中道左派層の支持を奪い、野党を弱体化させることで長期政権を維持したのだ。

 7月の参院選で、「野党共闘」は不振に終わった(第216回)。「寄り合い所帯」への批判はいまだに根強かった上に、本来野党が主張すべき政策を全て安倍政権が予算を付けて実行してしまったからでもある。

 その結果、安倍政権の政策を否定しようとしても矛盾が生じることが多くなったのだ。例えば、「改正入管法」に対する野党の反対は、まるで「極右政党」のように見えた(第200回)。これでは、野党共闘の支持が広がるはずがない。

 一方、2議席を獲得して注目された「れいわ新選組」である。「消費税をゼロに」という主張は、自民党にパクられないところまで左に振り切っていた。だから、安倍批判票を得て一定の存在感を示すことができたのだ。山本代表は極めてクレバーな人物だと思う。自民党の強さを理解した上での行動なのだろう。

 「れいわ新選組」は、次期衆院選までは勢力を拡大することが可能だ。山本代表中心に「野党共闘」がまとまれば、自民党を慌てさせることができるかもしれない。ただし、問題はその後だ。

 7月の参院選でれいわ新撰組から当選したのは、脳性まひの木村英子氏と、筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の舩後靖彦氏だ。その結果、これまで遅々として進まなかった国会のバリアフリー化が急速に実現し始めた。大変すばらしいことであり、山本代表の決断と行動力には最大の敬意を表したい。

 しかし、今後自民党は、日本社会全体の「バリアフリー化」を徹底的に推進し始めると思うのだ。その他、山本代表が主張することについて、やれることは全て予算を付けて実現しようとするだろう。山本代表を「骨抜き」にする。それが、自民党の恐ろしさだ。

 最後に山本代表に残るのが「消費税」だ。だが、それは政界での存在感を増して政権が近づけば近づくほど、山本代表を悩ませるものになっていくだろう。これは、かつてさまざまな「新党」が散々にもがき苦しんだ、いばらの道である。クレバーな山本代表は、ポピュリズムを飲み込む自民党と戦うための「新しい戦略」をどう見いだすのだろうか。