「メチャクチャ面白い。必読です」――山口周氏がそんなツイートを投稿するや、アマゾンのランキングが急上昇した一冊がある。戦略デザイナーとして活躍する佐宗邦威氏の『直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN』だ。
「ロジック」や「戦略」ではなく、個人の「妄想」を駆動力にする思考法を説いた同書を、山口氏はいったいどう読んだのだろうか? 他方、「アート」「美意識」に続くキーコンセプトをまとめた山口氏の最新刊『ニュータイプの時代 新時代を生き抜く24の思考・行動様式』も、発売直後から大きな話題を呼んでいる。
こうしたテーマの本が、世の中に急速に受け入れられつつあるのには、どのような背景があるのだろうか? 全3回にわたってお届けする、山口氏・佐宗氏対談シリーズの第2回(構成:高関進)。

ビートルズ戦略で「エビデンス病」を回避する

佐宗邦威(以下、佐宗) 僕が「妄想」の価値を実感したのは、アメリカのシカゴに留学して、いろいろな国のビジョナリーな人たちと直接話したタイミングでした。彼らはまず「巨大な妄想」のレベルからはじめて、そのあとに具体化していくという頭の使い方をしていたんです。

1960年代にKJ法を考案した文化人類学者の川喜田二郎先生が、「日本人は、具体を元に具体を改善するのは得意である一方、具体をコンセプト化する抽象思考が苦手だ」ということを指摘しています。つまり、40年以上前から状況は変わっていないわけです。

山口 周(やまぐち・しゅう)
1970年東京都生まれ。独立研究者、著作家、パブリックスピーカー。ライプニッツ代表
慶應義塾大学文学部哲学科、同大学院文学研究科修了。電通、ボストン コンサルティング グループ等で戦略策定、文化政策、組織開発などに従事。
『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(光文社新書)でビジネス書大賞2018準大賞、HRアワード2018最優秀賞(書籍部門)を受賞。最新刊は『ニュータイプの時代 新時代を生き抜く24の思考・行動様式』。
その他の著書に、『劣化するオッサン社会の処方箋』『世界で最もイノベーティブな組織の作り方』『外資系コンサルの知的生産術』『グーグルに勝つ広告モデル』(岡本一郎名義)(以上、光文社新書)、『外資系コンサルのスライド作成術』(東洋経済新報社)、『知的戦闘力を高める 独学の技法』(ダイヤモンド社)、『武器になる哲学』(KADOKAWA)など。神奈川県葉山町に在住。

自分で意識しないと抽象化はできません。これは能力の問題ではなく、それ以前の意志の問題で、日本人はもともと抽象的なものを見ようとする意識が高くないのだと思います。シルクロードを通ってくる物や文化の受け皿になって、具体を混ぜ合わせてカスタマイズする――日本人にはそんなDNAが流れています。

しかし、いまのような成熟の時代にあっては、それだけではやっていけません。そのために重要なのが「妄想」=「目に見えないものを見る力」です。従来の「目に見えるエビデンスがなければ…」という近代的な考え方からは、新しい文化が生まれるはずがないからです。

山口周(以下、山口) 私もそうでしたが、そうした「エビデンスの病」から脱却するのはすごく大変ですよね(笑)。

佐宗 僕はP&Gを辞めたあと、鬱で倒れた時期に昔の自分を捨てることができました。それでも仕事に戻ったとき、昔の自分の「亡霊」がときどき出てきます。クリエイティブな新しいことを考えているとき、「エビデンスがないとダメなんじゃないか」という恐怖心が出てくるんです。

恐怖心を抱えながら創造的なことをやるのはけっこう難しい。過去の自分の亡霊と戦いながらどう創造してくかというのは、いまの僕にとっても現実的な課題ですね。

山口 一方で、ある程度はマーケットを意識して動くことも、「自分が本当にやりたいこと」をやるうえでは必要だと思いませんか?

たとえば、私は本を書くときには「役に立つ」と「意味がある」の軸を意識するようにしています。私がいちばん最初に書いた本は、「天職」や「キャリア」に関する内容だったんです。これはこれで「意味がある」と思って書いたんですが、全然反応がなかった(笑)。その反省の元に立って考えたのが、「ビートルズ戦略」です。

佐宗 面白そうですね!