山口 「制約からの解放」といえば、クリエイティブディレクターの佐藤可士和さんが慶應大学で、学生にいろいろなものをデザインさせるという授業をしています。その最後のお題が、「人間が移住する前提で火星をデザインする」で、かなり根源的な問いが学生から出てくるそうです。

「火星でもお金は必要か」「そもそもお金とは何か」「国はあるのか」「自動車は必要か」など、まさに妄想の世界です。制約が何もないので、自動車とは違ったモビリティのほうがいいという発想になるし、結果的に、「都市を縦横無尽に動くベルトコンベアのようなものをつくって、そこに座るだけで移動できるようにすれば、目的地に着くまで座って仕事をしていられるのでは?」というアイデアが出てきたりもする。制約を取っ払ったほうが、解決したい根源的な問題について深く考えることができるようになりますよね。

【山口周×佐宗邦威】データ・確証がないと動けない…「エビデンス病」を抜け出す方法

(第3回に続く)