K君と同じように、就学援助によって目の前の選択肢を増やせた子どもが、X市には48人いる。そして担当管理職・M氏も、ひそかな念願を実現することができた。議員・子ども・担当者の合計は50人。その年度だけで「50倍返し」だ。そして就学援助の対象拡大は、X市が子どもの貧困解消に取り組み続ける限り、その後も継続されるだろう。何百倍返しになるだろうか。

役所は前例主義で律法主義
ならば前例と規定を持ってこよう

 この成り行きの最大のポイントは、役所の「前例主義」を、H氏が巧みに突いたことだ。就学援助は、各自治体が独自に動かせる制度の1つだ。「隣のY市もやっている」というだけでは、「ウチはウチ」「Y市はウチよりも豊かだからできるんです」などと跳ね返されてしまうかもしれない。しかし、「全国で少なくとも5つの自治体がやっている」「ウチより財政事情の厳しい自治体もやっている」と言われたら、自治体は動かざるを得なくなる。役所は「前例主義」だからだ。

 法や省令や施行規則で規定されている制度の場合は、それらの条文に規定があるかどうかがポイントとなる。生活保護の場合は国の制度なので、「議員が申請についてきてゴリ押ししてくれたから保護開始になった」「議員の口利きで、エアコン費用が認められた」といったことは、基本的にあり得ない。議員が実際に助け舟を出しているのだとしても、認められた理由は、「法・省令・施行規則などのどこかに規定があり、その規定に照らしてOKだった」以外にはあり得ないからだ。もしも議員のゴリ押しや口利きで規定が曲げられたのなら、大問題だ。

 議員自身が、すべての法や規定に通じることは不可能だ。しかし、毎年夏に開催されている「生活保護問題議員研修会」のような機会を活用すれば、生活保護や貧困に関心を向けている他地域の地方議員、さらに深い知識と豊かな経験を持つ法律家や社会運動家と知り合いになれる。すると、困ったときには知恵を借りることができる。

 とはいえ、財政面の「ない袖は振れない」という問題は、どうしようもないかもしれない。