一方でノーベル経済学賞を14年に受賞した、仏トゥールーズ・スクール・オブ・エコノミクス運営評議会議長のジャン・マルセル・ティロール氏(注・リンク先は音が出ます)は19年1月の競争政策の会議で、グローバル・テクノロジー企業のトップを米国と中国が分け合い、欧州企業は劣後しているという認識を示しました。そして米DARPA(国防高等研究計画局)がしたような、特定産業を強化する「ターゲット産業政策」が解決策の一つだと述べています。EUの企業がGAFAに伍していくには、民間の努力もさることながら、政策による後押しの比重が今後高まっていくと予想されます。

 では米国政府が自国企業であるGAFAを完全に支援しているかというと、現時点ではむしろ逆の方向です。米国でも18年春の個人情報漏えいスキャンダルによって、今まで尊敬される企業だったフェイスブックに、ネガティブな印象が生じました。この情報漏えいでは米連邦取引委員会(FTC)が過去最大の50億ドル(約5300億円)の制裁金をフェイスブックに科しています。20年の米大統領選挙出馬を決めた著名法学者、エリザベス・ウォーレン上院議員は、巨大テクノロジー企業が後進のスタートアップ企業によるイノベーションを阻害しているとして、グーグル、アマゾン、フェイスブックの会社分割を公約しています(出所:ウォーレン陣営の公式ウェブコラム)。

 GAFAに対する各国からの逆風の根底には、GAFAへの課税で長年、苦い思いをしてきた経緯があります。欧州委員会によれば域内の既存産業は課税率が23%に上る一方、インターネット企業は8~9%にとどまっています。課税は国家の大きなパワーであり、財政にも影響を及ぼします。

 ところがGAFAのようなデジタルプラットフォーマーは(1)国境を越えた電子的な取引と、(2)知的財産権(IP)などの無形資産の価値算定の困難さを利用し、(3)デジタルな無形資産の権利移転を行いながら、(4)利益を圧縮しつつ、(5)利益をタックスヘイブン(租税回避地)にプールするという仕組みを構築して、巨額の節税を行ってきました。

 もう少し具体的に言うと、利益を圧縮し、各国の税法の中でも自社に有利なものを選ぶ「トリーティ・ショッピング(条約あさり)」をするために、各国に実体のないペーパーカンパニーを設立します。このスキームでは課税のない英領バミューダ諸島や同ケイマン諸島などにペーパーカンパニーがつくられます。