Photo by metamorworks/PIXTA

「アマゾンプライムはショッピングの歴史の中で最もお得なサービスだ」――。アマゾン・ドット・コムの創業者兼CEO、ジェフ・ベゾス氏の言葉だ。買い物や娯楽のさまざまな特典を受けられる有料会員制度のプライムは、日本では2007年に始まり、販売者や消費者のあらゆる欲求を満たしながら日本列島をのみ込もうとしている。(ダイヤモンド編集部 重石岳史)

プライムデーに初参加した兵庫のハンガーメーカー
7月の売り上げが前年の3倍に

 日本海に面した兵庫県豊岡市。終戦翌年の創業以来、この地で木製ハンガーの製造販売を営む中田工芸の中田修平社長は、7月の売上高を知り驚愕した。

 前年同月比で約3倍――。ハンガーは季節性が高く、夏場は売り上げが落ちる。過去にもさまざまな販売強化策を行ったが、そのいずれをも大幅に上回る結果だった。

 理由は明瞭だ。

 同月15~16日の2日間、アマゾンが世界18カ国・地域で同時開催した有料会員向け特売イベント「プライムデー」に、自社ブランド「中田ハンガー」を初めて出品したことにある。わずか48時間の特売で、売り上げの記録的な伸長を達成したのだ。

 中田工芸は戦後、工場で作ったハンガーを神戸や大阪のテーラーに売り歩くことから始まった。

 百貨店やアパレル会社へ業務用ハンガーを納品し、1980年代に最盛期を迎えた。だが90年代に入ると大量に輸入される安価な中国製のハンガーに押しやられ、瞬く間に会社は傾いた。同業他社は次々と廃業に追い込まれ、国内で現存する木製ハンガーのメーカーは今、中田工芸のみだ。

 生き残りを図るために中田工芸は高級ハンガーの自社ブランドを立ち上げ、業務用から一般消費者向けビジネスへと転換した。販路拡大を懸けたのが、インターネット販売だった。アマゾンには5年前から出品を始め、来年以降も引き続きプライムデーに出品する意向だ。

 「予想をはるかに上回る売り上げで『まさか』という思い。ものすごい販売力だ」。中田社長は感嘆の声を上げる。

プライムデーで出品された商品の数々今年のプライムデーは日本国内で数十万種類のセール対象商品が販売され、プライムデー史上「最も注文数が多い2日間」(アマゾンジャパン)となった Photo by Takeshi Shigeishi

 今年のプライムデーには、中田工芸以外にも多くの地方企業や自治体が出品した。

 回転ずしチェーン「無添くら寿司」を運営するくらコーポレーション(大阪)はウナギのかば焼き(18食セット)を初出品し、販売開始早々に完売した。特産品のメープルシロップ「トペニワッカ」を出品した北海道占冠村の役場担当者は「アマゾンのおかげで販路を拡大でき、生産分は全て完売した」と話す。

 こうした地方物産の囲い込みは、アマゾンジャパンの目下の戦略のようだ。