「最初に給料を上げる」理由とは

特別対談:RIZAPグループ特別顧問・松本 晃×横浜DeNAベイスターズ初代社長・池田 純池田 純/早稲田大学卒業後、住友商事、博報堂勤務などを経て2007年にディー・エヌ・エーに参画。2011年横浜DeNAベイスターズの初代社長に就任。2016年まで5年間社長をつとめ、コミュニティボール化構想、横浜スタジアムのTOBの成立をはじめ様々な改革を主導し、球団は5年間で単体での売上を倍増し黒字化を実現した。退任後はスポーツ庁参与、明治大学学長特任補佐、日本ラグビーフットボール協会特任理事などを歴任。2019年3月よりさいたま市と連携してスポーツ政策を推進する一般社団法人さいたまスポーツコミッションの会長を務める

池田 僕は今、主にスポーツの世界で組織変革に取り組んでいるのですが、どちらかといえばスポーツよりも、変革に取り組みたいと思いが強いのです。そうした現場で感じるのは「変革をしたい」とおっしゃる人はたくさんいる。しかし、心の底では実は変えたくないと思っている人が多いということです。松本さんがカルビーの変革を任されたときはいかがでしたか。

松本 組織が弱くなる理由は2つあります。過去の成功に溺れているか、負け犬になっているかです。カルビーは前者でした。スナック菓子の世界でずっと勝者だったから、もうこれ以上の成長はないと思っていたわけです。その点では、「変えたくない」あるいは「変える必要はない」と思っていた人が多かったのは事実でしょうね。

 しかし、どんな市場だってこれ以上の成長がないということはあり得ないですよ。人口が減っているといったって、工夫の仕方でいかようにもなります。だから工夫して成長を目指しましょうと。僕がやったことは社員にその意識を植え付けただけです。

池田 具体的にはどんなことをされたのですか。

松本 野球だったら、優勝したときのイメージをみんなで共有することが大事でしょう。年俸が上がるよ、世の中から注目されるよ、ハワイに優勝旅行に行けるよ──。そんなイメージですよね。企業でも、成長したらどうなるかをみんなでイメージすることが必要です。企業の場合そこは単純で、基本的には給料が上がることがモチベーションになります。そのモチベーションをより具体化するにはどうすればいいか。最初に給料を上げればいいんです。「成長したらもっと給料を上げるよ」と伝える。そうしたら、みんなやる気になりますよ。

池田 結果が出る前に給料を上げるのですか。

松本 「朝三暮四」という中国の故事があるでしょう。猿に「餌を朝3つ、夜4つやる」と言ったら怒ったので、「では朝4つ、夜3つやる」と言ったら喜んだという話です。人間も猿も似たようなものです。

 言うまでもなく、社員を猿になぞらえているわけではありません。古典には人間を洞察する真理があるということです。今の言葉で言うなら、「ギブ&テイク」の関係です。ただ、まず「テイク」があって、成果を出せば「ギブ」をするのではなく、まず「ギブ」をして、然る後に「テイク」を得て、さらに「ギブ」をするというのが私の考え方です。