薬局戦争 特別インタビュー3Photo by Masato Kato

「週刊ダイヤモンド」9月14日号の第1特集は「薬局戦争」。今や6万店近くと、コンビニよりも多い薬局が転換期を迎えている。大手ドラッグストアチェーンの経営統合で、売上高1兆円の“メガ薬局”が初めて誕生したことで、本格的な薬局戦国時代に突入した。業界の変化の影響は、現場の最前線に立ち、対人業務重視など役割が変わりつつある薬剤師にも及ぶ。約30万人の薬剤師のあるべき姿とはどのようなものか。日本薬剤師会の山本信夫会長に、薬局や薬剤師の将来像を聞いた。(聞き手・ダイヤモンド編集部 大矢博之)

5.9万店の調剤薬局は偏在している
地域に分散しないと国民への責任が果たせない

――対人業務の重視など、薬剤師の役割が変わりつつあります。

 日本に薬局制度が誕生して約130年。薬剤師は調剤する人、薬局は調剤する場所だという仕組みで進んできました。今秋に予定されている医薬品医療機器法の改正で、それが根本から変わります。

 調剤は薬剤師の業務ではあるけれど、患者の服薬状況を一元管理し、(OTC医薬品も含めて)どんな薬を飲んでいるかを継続的に指導・管理しなさいと法律に記載されます。薬剤師は地域の医薬品供給に責任を持つ立場へと変わるのです。薬局も、調剤の場から地域に医薬品を供給する場所になります。調剤しかしない、OTC医薬品の販売しかしない、こうした片方だけの役割ではだめなのです。

――薬剤師の負担は増えるのでは。

 働き方が変わるのではなく、本来の働き方に戻るのです。かつての薬局は、近隣の患者さんのことをよく把握していました。それが、処方箋に従って薬を出すという今のような形態に変わっていった結果、薬剤師が“サラリーマン化”してしまった。

 ですが、午前9時~午後5時の勤務のままでは、地域のチーム医療に薬剤師は参画できなくなります。勤務時間がただ過ぎればいいという、サラリーマン薬剤師の時代は終わりました。医師の処方箋に問題があれば「ノー」と言えるのは薬剤師だけです。薬の最後の安全弁としての役割が求められています。