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薬学部生は就職活動の“勝ち組”だ。2018年3月に卒業した学生の就職率は97%。医療機関や薬局はあの手この手で薬剤師の“卵”たちを奪い合う。薬学部生の就職先はどうなっているのか。モデル年収や就職難易度とともに、売り手市場の就活の最前線に迫った。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)

奨学金の返済補助に
地方は時給4000円

「初任給30万円に加えて、奨学金の返済を補助しますよ」――。

 今春、東京都内の私立大学薬学部に通い、就職活動中の男子学生は、学内で開催された就職説明会でこんな言葉を投げ掛けられた。声の主は、とあるドラッグストアの採用担当者だった。初任給の高さの魅力もさることながら、6年間借り続けた奨学金の返済補助に心が揺れた。オファーに応じると選考はとんとん拍子に進み、あっという間に内定が出た。

 空前の「売り手市場」が続く新卒採用の就職活動。薬学部生も例外ではなく、薬学教育協議会の就職動向調査によれば、2018年3月卒業の薬学部生の就職率は、実に97%に上った。高齢化社会に対応すべく、医療機関や薬局は、“薬剤師の卵”を巡って熾烈な争奪戦を繰り広げている。

 とりわけ必死の人材確保が行われているのが地方の医療機関や薬局だ。「地元の大学病院から突然電話がかかってきて、『卒業後、うちの病院で働かないか』と言われた」(都内薬学部生)。ドラッグストアの時給を見ても、東京都内は2500円程度の求人が多いのに対し、地方ではなんと4000円を提示している店舗もある。地方に行けば行くほど待遇が良くなっているのだ。病院やドラッグストアを問わず、人手不足の深刻さが垣間見える。

 ただ、売り手市場とはいえ、就職先には“ヒエラルキー”が存在する。引く手あまたの薬学部生には、どんな未来が待っているのか。(イラスト内の数字は薬学部卒業生の就職率)

 言わずと知れた人気職は、製薬会社の研究・開発職だ。新卒採用のトレンドは売り手市場が続いているが、こちらは例外で、企業優位の「買い手市場」となっている。かつては大学の研究室から一本釣りされることも多かったが、今となっては昔話。激しい就職戦線を勝ち抜いたエリートのみがたどり着ける。

 トップ層の国公立大学の学生が中心で、私立大学からの就職は難しい。給与については仕事の成果が見えにくい分、年功序列が基本で、日系大手では40歳前後で年収1000万円の大台に乗るケースが多いようだ。

 薬の“種”を探す研究職は、薬を世に送り出し、多くの命を救うことができれば社会に与えるインパクトも大きい。ただ、大手製薬会社がM&A(企業の合併・買収)を盛んに実施したり、研究部門の分社化を進めていたりすることもあり、採用数が減っている。臨床試験を担う開発職も同じく難関だが、近年ではCROと呼ばれる臨床試験を請け負う企業の出現により、研究職と同じく採用数が絞られている。製薬会社の売上高が頭打ちになっていることもあり、これまで自社でそろえてきた人材の外注化が進めば、就職難易度はさらに上昇していくだろう。

 製薬会社の営業を担うMR(医薬情報担当者)は、薬剤師資格が不要のため、実は薬学部生以外の就職が多いのが特徴だ。全体的な給与水準は、研究・開発職には及ばないが、営業職であるため評価によって年収に大きな差がつく。