薬局の世界で、患者と向き合う最前線に立たされる薬剤師たち。現場で出会うあまたの患者との日常のやりとりは、想像以上にストレスフルなようだ。国の施策に翻弄される薬剤師に現場での苦悩や不満を語ってもらった。(ダイヤモンド編集部 相馬留美)
▼参加者プロフィール
A氏 チェーン系調剤薬局勤務 30代 男性
B氏 門前調剤薬局勤務 50代 女性
C氏 ドラッグストア勤務 30代 女性
D氏 オンライン薬局と調剤薬局のダブルワーク 30代 男性
「ジェネリックは嫌だ」と
かたくなな患者たち
――皆さんが最もよく遭遇する「困り事」ってなんですか?
B氏 ジェネリック医薬品(後発医薬品)ですね。「こんなものは使いたくない」って言われます。
A氏 厚生労働省が推奨していると言っても、先発医薬品からジェネリックにはなかなか変更させてもらえません。特に高齢者はその傾向が強いです。効果は同じだと言っても駄目ですね。
B氏 国会議員や公務員に、「ジェネリックを使いたくない」と希望されることもあります。国がジェネリックを推奨しているのに、矛盾していますよね。
――ジェネリックを薦めることで、薬局にも得なことがあるのですか。
A氏 調剤報酬の算定で、ジェネリックを出す割合が高い薬局は、点数が加算される仕組みなんです。門前薬局のように、処方箋の受け付け枚数が多い薬局は、点数が低くても薄利多売でもうけられます。でも、うちは街中の薬局チェーン店。処方箋の枚数が少ないので、処方箋1枚当たりの点数を高くする必要がある。ですから、ジェネリックを薦めます。
――なるほど。トラブルの元であっても、薦めないわけにはいかない。
B氏 ジェネリックに変更するかどうかを患者さんに尋ねたときに、その言い方にかちんときたのか、「俺を殺す気か!」と怒鳴られたこともありますよ。そういう患者さんにも、その方にとって良い方法を考えてあげたくて、きちんと説明してみたら、かえって仲良くなりました。今では常連さんです。
――順番待ちも多い調剤薬局で、患者と話をしている時間はあるのですか。
B氏 できるだけ耳を傾けたいとは思いますが、立て込んできたら、やんわりとお断りしています。でも、1人暮らしで孤独な人も多く、しゃべりたくて仕方がないみたい。
A氏 医師への愚痴もよくありますね。そうした何げない会話をしていて、患者さんから「薬の服用を自分で調節している」と打ち明けられたこともあります。医師に伝えるべきか否か悩みました。
B氏 電話対応で患者さんにつかまってしまうと、内容確認から説明まで含めたら、半日がかりになってしまうこともありますよね。
D氏 混んでいるときに、いつも話が長い患者さんが来たら、「後の方がゆっくり聞いてあげられるけれど、どうしますか?」と尋ねて、順番を後ろに回しちゃいます。
C氏 私はドラッグストア勤務ですが、患者さんの話が長くなっても、こちらからはなかなか終わらせることができなくて。それで、自分の本来の業務時間がどんどん減ってしまう……。
D氏 とはいえ、患者さんと話す時間はもっと欲しいんです。服薬指導が薬の効果や飲み方の説明に終わってしまうケースも少なくない。もっと疾患の説明もして、「なぜこの薬があなたに必要なのか」という意義をしっかり理解してもらうことが本来は必要です。そうした説明のできる薬剤師が増えてほしい。調剤業務の自動化を進めて、対人業務に割く時間を増やしたいですね。
B氏 「説明はいいから早く渡して」と言う患者さんに限って、帰宅してから「使い方がよく分からない」と電話をかけてきたりする。どっと疲れますよ。
――苦労が絶えませんね。薬剤師の立場で困ってしまう、患者からの質問はありますか?
A氏 お薬手帳にまつわる薬代。具体的には、「他の薬局と自己負担額が違うのはなぜ?」とよく質問されますね。お薬手帳を持参したら薬代が安くなることは周知されてきましたが、実は門前薬局などの場合は、例外もあるんです。うちはその例外に該当するので、基本料が他と違うことを説明するんですが、なかなか理解してもらえなくて。
B氏 逆に、処方箋を院外に出さず、院内で薬をもらえる医療機関では、お薬手帳のシール代金の分だけ自己負担額が増えます。患者さんの負担としては、数十円ですけれど。整合性が取れていないので、その点は国に解消してもらいたいですね。
あと、よくあるのが、病院の門前薬局は、カルテのデータを病院と共有しているという勘違い。「病院からデータが転送されているだろうから、もっと早く調剤できるだろう」と文句を言われる。
A氏 チェーン系列の薬局同士でもデータの連携ができていないのに(笑)。
B氏 そう。しかも、そこそこ多いクレームの一つ(笑)。
A氏 あと、処方箋に「病名」が書いてあればいいのになあ……。
(全員うなずく)