人口減少や高齢化の
異なる側面

 日本経済の将来に関する悲観論が蔓延している。人口は減少するし、高齢化も進行する。近隣の韓国や中国に追い上げられ、国内ではデフレが続いている。たしかに悲観的な要素ばかりのように見える。

 しかし冷静になって考えてみると、悲観論にも怪しい面が数多くある。いろいろな国のデータを検証すればわかることだが、人口の伸びと経済成長の間には、短期でも長期でもほとんど相関は見られない。

 人口が急増している多くの途上国のなかには、マイナス成長の国も少なくない。逆に、日本より激しく人口が減少しているドイツは、目下のところ経済は好調である。人口が減るからといって、日本が貧しくなると決めつけてはいけない。

 もちろん、高齢化の問題はある。より少ない現役世代でより多くの高齢者を支えようとすれば、経済的には厳しいことになる。しかし、日本人の平均寿命が長くなれば「若い高齢者」も増える。そのなかには元気な人も多いはずだ。彼らの多くが仕事を続ける可能性も考えなければいけない。高齢化時代になれば社会システムも変わっていくのだ。

 人口減少が成長にプラスに働く面もある。私たちにとって重要なのは、経済全体の所得であるGDP(国内総生産)やGNI(国民総所得)ではなく、それを人口で割った「一人当たりGDP」や「一人当たりGNI」であるからだ。

 社会や経済の仕組みを根本から変えるという気持ちがあれば、楽観的な将来像を描くことは可能だ。もちろん、人間はこれまで慣れ親しんだものを変えることには大きな抵抗を感じる。しかし、経済のメカニズムは、ときには過去の制度や慣習の維持を許さない。この連載のキーワードである「創造的破壊」とはそうしたものだ。

 あまり激しい破壊に起きてほしくはない。だが、ある程度の破壊について覚悟を決めれば、その先にある新たな創造の部分を考えてみたくなるものだ。それが楽観主義につながる。