ビートルズの4人『アビイ・ロード』(9/27発売 ユニバーサルミュージック) (C) Apple Corps Ltd. 

ビートルズの最後から2番目のアルバム「アビイ・ロード」が発売されたのはちょうど50年前、1969年9月26日のことだった。ビートルズはこのころ解散説が流れていて、グループとしては存続の危機にあった。69年1月にアルバム制作に入ったものの頓挫し、世界中のファンがやきもきしていたが、まったく別のアルバム制作が7月に始まり、9月の発売にいたったのである。それが「アビイ・ロード」だ。あれから50年、アナログの音源が技術的に整理、更新されて3次元サラウンド版まで追加され、「50周年記念エディション」としてこの9月27日に発売されたのである。(ダイヤモンド社論説委員 坪井賢一)

世界が騒然としていた
1969年の記憶

 1969年は世界中が騒然としていた。前年に始まるフランスの学生運動「5月革命」が各国に広がり、日本でも東大闘争や日大闘争が激化していた。アメリカではベトナム反戦運動、日本では成田闘争や日米安保反対運動も複合して大混乱が続いていた。学生と警官隊が連日衝突し、2019年の香港のような様相だった。21世紀の日本の大学生には信じられないような光景が繰り広げられていたのである。

 20代の終わりにさしかかっていたビートルズの4人(ジョン・レノン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スター)も長髪にヒゲをたくわえ、インド滞在で感化された東洋的な瞑想や、ドラッグに代表されるアメリカのアナーキーなヒッピー文化を体現するようになり、大きな社会的影響力を持っていた。

 挫折した1月の録音セッションに次ぐ2度目のセッションは、いろいろな障壁を乗り越えて順調に進行し、新作アルバム「アビイ・ロード」は9月26日の発売日を迎えた。

 当時の空気を覚えていて、その中から登場した「アビイ・ロード」を強く記憶しているのは60代以上だろう。一方、ビートルズをロックの歴史をさかのぼりながら聴いてきた50代より若い世代にとっては、文字通り歴史的な名盤として広く認識されているはずだ。

 物情騒然とする1969年9月26日、私は中学3年で、もちろん2000円もするアナログLP盤など買えなかったが、友人から短期間拝借して聞いた。そのときの強烈な記憶が脳に刻み込まれている。その後、CD化されたディスクももちろん聞いているが、あの騒然とした空気の中で何十回も聞いたLPの音は頭から消えない。