一方義母は、夫と息子に先立たれた寂しさを周囲に聞いてもらいたいようで、毎日のように出歩いていた。

 義父と義母の仲があまりよくないことは感じていたが、憲治さんとはどうだったのか。葬式の時も涙を見せず、「私はこれからどうなるの」と、不安を繰り返し口にしている様子が、美乃梨さんはいたたまれなかった。憲治さんを本当に愛していたのだろうか。

 そんなある日、美乃梨さんは近所のお嫁さん仲間に呼び止められ、衝撃のうわさを聞かされた。

「あなたのお義母さん、『嫁がご飯を食べさせてくれない』って、毎日、よその家でご飯をごちそうになってるわよ。『息子さえ生きていれば』って号泣するんですって。本当に食べさせていないの」

 冗談じゃない。朝昼晩ちゃんと食事を用意しているし、義母は残さずぺろりと平らげている。どうしてそんなことを言うのか。さすがに美乃梨さんも怒り、問いただした。すると…。

「おや、ちゃんと食べさせていただいておりましたか。それはどうも、気がつきませんで、申し訳ございません」

 義母は無表情で頭を下げると、さっと外へ出かけてしまった。

義母はタンスに
大便をため込んでいた

 義母は、同情を買いたくてうそを言いふらしていると、美乃梨さんは思っていたが、しばらくすると、どうもそればかりではないらしいと気がついた。

 ある日、義母の部屋からものすごい悪臭がしていたため、中に入り、恐る恐るタンスを開けてみると、大便が大量にしまい込んであったのだ。

「うわぁっ、汚い」

 悲鳴が漏れた。そう、義母は認知症を発症し、普通の日常生活も送れないほど、悪化していたのである。

 食事の件も、食べたことを完全に忘れていたのかもしれない。