売り手市場の今こそ問われる
「ここで働く意義」

 就職・転職売り手市場が続いており、転職へのハードルは決して高くない。そうしたなか、個人の視点で考えると、「その会社で働く意義」を明確に持ち続けられるかどうか、がとても重要になってくる。

 ウエディング事業などを手がけるCRAZYは、創業当初から新卒・中途問わず新入社員には、社員全員の前での「ライフプレゼンテーション」という発表を義務付ける。テーマは自分自身の人生。生まれてからこれまでの出来事や自分の価値観、課題、目標を考え、「なぜCRAZYで働くのか、覚悟を問う」(CRAZY採用責任者・乾将豪氏)プレゼンである。

 新入社員は3ヵ月の試用期間が終わるタイミングで、3週間ほど時間をかけてプレゼンの準備をする。その際、先輩社員が「バディ」と呼ばれるサポート役を務め、本人が自分の人生を振り返る手助けをする。

「当社は、結婚式というお客様の人生と向き合うことが仕事の会社。同じように、社員一人ひとりの人生観とも向き合うことが大切だと考えています」(乾氏)

 短い選考期間を売りにする企業も多いなか、同社は「人によっては10回以上面接を重ねることもある」(乾氏)という。個人の価値観や今後の目標などを踏まえ、このタイミングで、同社を選ぶべきなのか深く考えられる採用プロセスにしているようだ。

 どこでも働ける時代だからこそ、「ここで働く意義」を問う。「ライフプレゼンテーション」は、当事者の新入社員だけでなく、バディをはじめとする既存の社員たちにとっても「なぜ自分がここで働くのか」を改めて考える機会になっているという。その会社を選ぶ意義が明確であれば、「会社に対するエンゲージメントもおのずと高まっていく」と乾氏は話す。

 少子高齢化が進み、従来型の「より多くの母集団を集めて上から優秀者を採っていく」手法には限界が来ている。だからこそ、企業は自社の採用成果を今一度丁寧に振り返り、長期的な視点で人材採用とその定着に取り組む必要があるのではないだろうか。

(ダイヤモンド編集部 笠原里穂)