人・組織を鍛え抜く 日本電産「永守流」#4

カリスマ創業者の眼鏡にかない、後継者に指名された日本電産の吉本浩之社長。しかし就任1年目から経営環境の激変による業績悪化に直面し、再び永守重信会長が経営の前面に復帰した。吉本社長はこの試練をどう乗り越えるのか。特集「人・組織を鍛え抜く 日本電産『永守流』」(全10回)の#4では、2人の1年間の軌跡を追った。(ダイヤモンド編集部論説委員 深澤 献)

「潜在能力は高いが
権限委譲には10年かかる」

 9月中旬、吉本浩之社長は米中西部のセントルイスにいた。単発の出張ではない。7月以降ほぼずっと同地を拠点として世界を飛び回り、家電・商業・産業用モーターや車載モーター事業のてこ入れに奔走しているのだ。なぜ、永守重信会長から社長のバトンを渡されたはずの吉本社長が長期で本社を離れて海外にいるのか。

 その理由を直接聞くべく吉本社長に取材を申し込んだが、残念ながら業務多忙で実現しなかった。しかし、社長交代から1年余りの永守会長・吉本社長師弟の発言を追うと、その理由が見えてくる。