一代で大企業を築き上げた大経営者でも、後継者選びでつまずく例は枚挙にいとまがない。日本電産の永守重信会長は昨年、後継社長として吉本浩之氏を指名した。この先、いかにして吉本社長にバトンを渡すのか。特集「人・組織を鍛え抜く 日本電産『永守流』」(全10回)の#1では、カリスマ創業者故の葛藤と苦悩を語った。(聞き手/ダイヤモンド編集部論説委員 深澤 献)
日本にはプロの経営者はいない
後継者は自分で育てるしかない
――吉本浩之社長を後継者に指名してから1年余りたちました。創業者として後継者を選ぶまでどのような苦労や葛藤がありましたか。
こんなに難しいとは思いませんでした。65~70歳で後継者に社長のバトンを渡そうと思っていたので、60代の初め頃、2000年を過ぎたあたりから後継者探しを始めました。
社内にはこれまでビシビシと厳しく鍛え上げてきた強い人材の集団がいましたが、1兆円を超える規模の企業を経営できるような人はなかなか出てきませんでした。そこで、世の中でプロ経営者といわれる人たちを外部から採用しました。しかし結果はゼロ。経営を任せられる人はいませんでした。日本にはプロの経営者はいないということがよく分かりました。結局、自分で育てるしかないと。