人・組織を鍛え抜く 日本電産「永守流」#9

日本電産の永守重信会長が100億円を超える私財を投じて大学改革に乗り出している。理事長を務める永守学園(旧京都学園)が運営する京都先端科学大学(旧京都学園大学)は、早くも大きく変わり始めた。2020年にはモーター専門学科も開設予定。特集「人・組織を鍛え抜く 日本電産『永守流』」(全10回)の#9では、永守氏にとって「最後のライフワーク」となるであろう大学教育の最終目標を探る。(ダイヤモンド編集部論説委員 深澤 献)

2025年までに関関同立を
30年までに京大を抜く

 京都先端科学大学の前田正史学長は、オープンキャンパスにやって来る高校生とその保護者の姿が、この1年で大きく変わったと実感している。

「もう、見た目で分かります。こう言うと今までの生徒さんに申し訳ないが、生徒や保護者の姿勢からして違う。しっかり視線を前に向けて、明らかにこの大学をきちんと見てやろうという意識で、緊張感を持って来てくれている。以前は、“ここ以外受からない”という生徒が来ていたから、真剣に見る必要もなかったんでしょう」と前田学長は話す。

 京都先端科学大は、2019年3月まで京都学園大学という名称だった。前田学長の言葉通り、決して入学難易度の点でも、人気の点でも高い大学ではなかった。

 校名を変え、改革に乗り出したのは永守重信・日本電産会長兼CEO(最高経営責任者)だ。18年3月、かねて親交があった京都学園大の運営法人の理事長からの要請で、後任の理事長に就任。100億円を超える私財を投じ、大学経営に参画した。

「大学の名前を変えただけではなく、過去の延長線上にない、全く違う大学をつくった」と永守氏は言う。

 その言葉通り、東京大学生産技術研究所所長、東大副学長を経て日本電産生産技術研究所所長を務めていた前田氏を学長に招聘し、副学長、学部長も交代。教員や事務局の職員も入れ替えを進め、文字通りの“大改革”を断行している。