空前の液化天然ガス(LNG)船の発注ブームが到来しているというのに、日本の造船業界は現時点で全く盛り上がっていない。それどころか国内の一部造船所では、静かなる造船事業の“店じまい”ムードが高まりつつある。(ダイヤモンド編集部 新井美江子)
圧倒的な建造能力の差で
受注競争から脱落
「このブームに乗れないのだとすれば、さすがに厳しいですね」(LNG業界幹部)。日本の総合重工系の造船各社にとって、今年はひときわ寒い冬となりそうだ。
「LNG船向けの圧縮機の引き合いは、供給が間に合わないくらい多いですよ」。神戸製鋼所の役員がにやりと笑って語るように、世界全体で見れば今、造船業界には空前の液化天然ガス(LNG)船ブームが到来している。
世界最大のLNG輸出国である中東のカタールが、この先10年で100隻規模のLNG船を大量調達する方針を決め、発注を開始しているからだ。LNGプロジェクトは今後、アフリカのモザンビークやロシアなどでも立ち上がる予定であり、LNG船の需要は当分、増加傾向が続きそうだ。
神戸製鋼が製造するLNG船向けの圧縮機は、沸点が-約160度と超低温なだけに大気熱などで気化し続けてしまうLNGのガスを、タンクに戻したり、エンジンの燃料として活用したりするための機械だ。バラ色のLNG船市場で好調な売れ行きを確保し、まさにウハウハの状態である。