この技術についてアスタリスクは17年5月の「Japan IT Week」というイベント前に特許出願し、イベント当日に新型RFIDセルフレジを発表した。当日は試作機の展示とともに、「特許出願中」と書いたチラシを配布した。当時ファーストリテイリング のIT事業部の担当者にも、この技術について説明したという。

チラシ「特許取得済」と書かれた現在のチラシ Photo by R.S.

 そもそも、当時からファストリとアスタリスクは取引関係にあった。iOSに関連する製品を納入していたのだ。

 しかしその後、新型セルフレジについて、ファストリからアプローチはなかった。

 進展があったのは18年8月。ファストリが翌年2月から店舗展開するRFIDレジのコンペをしているという情報を知り、アスタリスクはIT部門の検討チームの担当者を紹介してもらった。

「仕様を見た時、『うちの製品のまんまじゃないか』と思いました。ですので、とにかくユニクロの製品を買いまくって、RFIDの読み取りを1カ月くらい試した」(鈴木社長)という。10月には提案書を提出することができた。

 鈴木社長は、「話をもって行った時は、担当者は『これがやりたかったんだ』と言ってくれました」と振り返る。IT事業部の担当者の反応は良かった、と鈴木社長は記憶している。もちろん、特許を出願中であることはファストリ側も知っていた。

 しかし11月になって、他社製品で決まった旨が伝えられた。IT事業部の担当者は、「もう推すことができない」と告げたという。「(現場レベルではなく)かなり上の立場の人間によるジャッジによって決まったことは、暗にわかった」(鈴木社長)。

 ここで、アスタリスクの製品が、ユニクロのセルフレジに採用されることはなくなった。