佐藤工業 宮本雅文社長
佐藤工業 宮本雅文社長 Photo by Yoshihisa Wada

トンネル工事の名門として知られる中堅ゼネコンの佐藤工業(東京)は、2002年に会社更生法の適用を申請して経営破綻、同年に上場を廃止した。09年に更生手続きを終えたが、業界が絶頂期にある今、破綻の影響は続いているのか。再上場はあるのか。宮本雅文社長に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 松野友美)

建設不況で覚えた違和感
今は中長期で業績を評価

――バブル崩壊後とリーマンショック後、何をしていましたか。

 バブルのときは、現場にいました。うちの会社には2通りの人がいて、売り上げを上げてどんどん投資する人たちと、われわれみたいに昔からの公共工事などで税金からお金をもらって技術を磨く仕事に携わる人たち。

 後者にいた側からすると、違和感がありましたよね。周りも悪かったとは思うんですけど、結果的にタコのように自分の足を食っていた。瞬間的にはお金がどんどん増えて、給料がどんどん上がった。でも現場でずっと命を懸けてやっているわれわれから見れば、そんなことをしていていいのかという気持ちを持っていました。結局、借金だけが残った。

 だから私は現場が最優先。現場で汗水垂らして働く人たちの姿が信頼されるんだと思います。職人と心を通わせながら、良いものを造る。で、地元の人たちにも配慮する。工事をやるときには間違いなく迷惑を掛けますのでね。頭を下げながら、工事の進捗状況を上手に説明して、一緒に早く終えるように応援してもらうといった関係になれば、終わって去るときには「ご苦労さんでした」って皆さん言ってくれる。「良いものを残してくれてありがとう」という言葉を聞ければ、それでいいと思います。

――現在の業界の景況感をどう見ていますか。

 一昔前に比べると建築といい土木といい、業界では建設の規模と請負金額がかなり膨らんでいます。一つの案件が大きければ大きいほど工期が長くなるので、受け渡しのタイミングによって売り上げがボーンと上がったり下がったりしている。

 実際、われわれがよく施工している100億円以下の案件の数は膨らんでいます。それに伴い、今までは1年半くらいの工期だったのが、2年半とか3年かかってしまうこともある。お客が望むタイミングで完成できるかという問題もあります。

 業績を評価するにも、1年程度の単位で見るのではなくて、3年ぐらいのサイトの平均値で見ないとうまくいかないのではないかと思います。

――建築と土木の割合は?

 建築と土木の割合は6:4くらいの比率です。建築の方がちょっと勝ってきている。

 土木建築の技術職員の能力と人数を施工体制と呼んでいますが、それ以上に受注を伸ばして施工中に問題が起きるリスクを考えると、今のかたちで信頼される仕事をきちっとやっていこうと考えています。

 今まさしく首都圏では建設需要が旺盛ですよね。加えて、かなり昔に造った建物やインフラの耐震性能や機能性が問題になっていますから、改修の需要も増えてきています。災害対策についても昔の想定で造ったものをそのままにしていては、人の命も国土も守れない。

――他のゼネコンの中には不動産開発に積極的な会社も複数出てきています。

 そこはわれわれ、勉強しているから。他社さんはちょっと、浮わついているところが出てきていますけれども。案件を上げるときには、ちゃんと社内で皆の承認を得て、取り組んでいくというスタンスをきちんとやる。