八巻恵一社長
佐藤工業(福島県) 八巻恵一社長 Photo by Satoru Okada

福島県を代表する名門ゼネコンの佐藤工業。業績は堅調だが、昨年末に準大手ゼネコンである戸田建設の子会社となった。非創業家で4月に社長に就任した八巻恵一社長にその狙いと今後の方向性を聞いた。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)

*本インタビューは台風19号が日本に上陸する前の今夏に実施したものです。

地方大手ゼネコンの傘下入り
という提案もあった

――昨年12月、準大手ゼネコンである戸田建設の子会社になりました。

 佐藤工業は1948年に創業し、2018年に創業70年を迎えました。30年後に迎える創業100年を見据え、社員や協力会社にとって望ましい姿とはどういうものなのか。創業者の孫である佐藤勝也前社長がそれを考え抜いた末の決断が、戸田グループ入りでした。

――傘下に入るきっかけは?

 当社の財務は、東日本大震災の復興需要もあって創業以来最良ともいえる状況ですが、佐藤前社長には後継ぎがいませんでした。その上で、“福島の佐藤工業”をいかに自立した形で残すかを考えていたところ、M&A(企業の合併・買収)の仲介会社から話を持ち掛けられました。

 佐藤前社長は、戸田建設が、1990~2000年代のゼネコン不況の際に金融機関の債権放棄を受けることなく、社員を削減するリストラもせずに財務の健全性を維持したことに注目しました。戸田の傘下なら、将来も安定して会社を永続させられると考えたのです。

 他の地方の大手ゼネコンの傘下に入るという提案もありましたが、佐藤前社長は、戸田以外の選択肢は考えなかったそうです。

――戸田の傘下に入るメリットは何ですか。

 戸田は、国内はもちろん海外でも豊富な実績があり、技術力も当社より高い。

 戸田のネットワークを使って、今後は他県での受注を狙うチャンスが増えると考えます。東北の他県や北関東は、従来なら“アウェー”でしたが、戸田グループに入ったことで、戸田の東北の他県や北関東の支店の支援を受けながら、福島と同じ品質で工事をやれる可能性がある。戸田と当社でJV(共同企業体)を組むなど、さまざまな方法が考えられます。

 これまでは、当社は福島の震災復興に貢献するのが務めだと思っていました。もちろんそれはこれからも変わりませんが、他県でも工事を受注し、成長していく必要があります。

 BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング。コンピューター上で3次元の建物のモデルを作成し、設計や施工から維持管理まで一貫して行うシステム)、CIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング。土木工事でBIMの概念を活用すること)の面でも、戸田のノウハウを吸収できることは大きいと思います。