Photo by Kazutoshi Sumitomo

かつてスーパーゼネコン5社に匹敵する規模の売上高を誇った熊谷組。海外投資や不動産開発などを積極的に展開していたが、バブル経済崩壊によって急速にその規模は縮小した。今では準大手ゼネコンとなったが、昨今の建設業界の景気の波に乗り、力を取り戻しつつある。櫻野社長に過去の教訓と次の一手を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 松野友美)

バブル後の不況時は人事部だった
希望退職者面談と新卒採用面接で矛盾

――バブル崩壊後やリーマンショック後の不況の頃を振り返ると、どんな思いがありますか?

 もう二度と経験したくない。私は1994年まで人事部にいて、95~98年は現場担当の一兵卒としてフィリピンに行っていました。帰国後、2001年まで人事課長。その時の思いを語ると……大変でしたね、本当に。

 日々、社員と面談し、会社の現状を理解してもらって、納得ずくで辞めてもらうという仕事をしていました。同じ日の午後1時からはそういう面談、午後3時からは新卒採用で若い人たちと面談。なんか自己矛盾というか、「俺ってこんなことしてていいのかな?」とか、「やだな、もう……」とか思いながら。社員に「大変な状況なんです」と言い、一方で若い人には「まだまだ頑張れますから、われわれは」って言っていた。

 フィリピンに行く前に、すでに不況の影響を受ける兆候は現れていた。92~94年ごろに人事の大改革をやって、退職金の水準をそこでいったん下げた。でも下げ切れずに、2000年にもう一段下げて、退職金3割減とか給与カットとか。揚げ句の果てに希望退職者の募集。

 もうそういう思いを社員には絶対にさせたくない。そのためには先を読んだ経営、身の丈に合った経営が大事。

 昔に比べると投資をするにも、「基準」をしっかり作ってあります。バブルがはじける前は個別の案件が良くてドンドンやっていった。例えるなら本当は10件ぐらいしか投資できる力がなかったのに、気が付くと100の案件に投資をしていて、借りまくっていたといいますか……。今は、個別の優良な物件を狙うだけではなく、総量規制をしなきゃいけない。

――基準とは具体的に?

 株主から預かったお金とか、銀行から借りているお金に対して、リターンの期待値があります。その期待値を超える利益を上げていくということが求められます。

 そんな中での基準の一つは「個別物件の収益性の基準」。一つ一つの物件を積み重ねてABCDEFGの案件に投資をすると、1年間で総投資が例えば200億円になるとして、本当にその200億円というのが体力に見合った金額なのかどうかという「総投資額の基準」です。

 一番気にしている指標は営業利益。ただ、不動産開発などで営業利益を上げようとして、リターンが高くなり過ぎると、「何かもうかるものはないか?」みたいな感じになって危険なんです。こうした基準を常に持っておきたい。

――建設業の今後の景況感をどうみていますか?

 17年に18~22年度までの5カ年中長期経営方針を発表し、そこで成長路線を打ち上げました。23年ごろにかけて、営業利益のターゲットゾーンを500億円くらいに設定しています。さらに、昨年は、18年度を初年度とする3ヵ年の中期経営計画も策定しました。中計では連結売上高4600億円、連結営業利益330億円に持っていこうと旗印を掲げています。

 これらの前提として、急激な景気の落ち込みというのは、まずないんじゃないかと。ただ、量的、質的な面で緩やかに変化していくだろうと読んでいます。

――公共工事と民間工事では?

 公共工事は、東日本大震災以降、災害復旧や強靱な国造り、防災・減災・強靱化などのキーワードがあります。一定額の投資をやっていかないと安全安心な国造りにならない。どこが絶頂期になるのかは分かりませんが、今くらいの水準が5年先まではずっと続いていくのではないかと思っています。

 民間については、昔みたいにみんなが一斉に投資を控えるような時代ではなく、持っているお金はどんどん使っていって、成長投資をしていこうという空気を感じます。あるいは、最近だと生産性向上に向けた省力化投資もどんどんやっていこうとか。一気に需要が激減するようなことはないんじゃないかな。ただ、民間投資が上がっていくかといえば、そうはならない。そんなざっくりとしたイメージです。