ゼネコン列島最前線第7回・戸田建設社長インタビュー
戸田建設 今井雅則社長 Photo by Masato Kato

準大手ゼネコンの戸田建設が2024年竣工を目指して自社ビルとその隣で再開発を進めたり、再生可能エネルギー事業にも注力したりするなど事業の多角化を進めている。元敏腕営業マンで、トップ就任後の経営改革でV字回復を先導した今井雅則社長に、業界の変化やこれからの見通しを聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 松野友美)

受注競争の過熱は
経営の品格の問題

――日本の建設業全体では、2020年以降の景況をどうみていますか。下がっていきますか。

 そうなると思いますよ。日本の人口が減ることはあっても増えることはない。東日本大震災のときに災害対策やインフラ整備の予算はボーンと増えましたが、今、官庁からの発注量が少しずつ絞られてきています。

――先食いしてるだけ?

 うん。どんどんどんどん少なくなってくる。民間投資については、米国と中国の貿易戦争でダメージを受けている企業があります。そういうのが少しずつ効いてくるかなと。そうすると、今までのストックをどうやって生かしながら質を上げていくかが肝心。

――最近、業界では受注競争が過熱していて、原価ギリギリで大型案件を取ることが増えていると聞きます。

 量を求めているゼネコンがそういうことをやり始めています。建設事業だけでやっていこうとすると、量も必要だから案件をたくさん取ることになる。その結果、コスト競争に陥って、昔の悪い時代のようになってしまうんだと思います。これは非常に良くないことです。最終的に職人たちの労務単価にしわ寄せがいき、業界に人が集まらなくなってしまう。建設業全体として本当に問題です。そうなってしまうのは、やっぱり経営の品格の問題じゃないですか。

――戸田建設が強い学校や病院などの案件にも変化は出てくる?

 うちは、これまでたくさん施工をやらせていただいていますし、専門の部隊もあります。そういうのが強みなんでしょう。言われたものをただ造るだけでは誰も選んでくれない時代になってくるし、すでになっていると思います。

 病院建設であれば、医療、経営者、病院の在り方も変わってくる。そこで私たちのノウハウとか能力をお客さんのためにどう生かしていけるか。今までのやり方では全く通用しないでしょう。(変化があるというのは)楽しみじゃないですか。

注目の超高層「常盤橋A棟」受注
大手と競合でもチャレンジする

――「東京駅前常盤橋プロジェクト」で高さ約210mの超高層ビルとなるA棟を受注しました(21年4月末竣工予定)。遅れて隣に建てる日本一の高さとなる390mのB棟の受注も狙いますか。

 そのときの状況によります。技術としてはやれます。

――A棟は戸田建設が安い価格で受注したのではないかという話を聞きますが。

 単価で勝負するわけではありません。発注者にも事業予算がありますので、その予算での建設を実現するために私たちがどんな技術を持っているかということだと思いますよ。構造にしたって、鉄筋コンクリートでやるのか、あるいは鉄骨でやるのか。いろんな工法がある。地下を掘るにしてもね。そういう技術力の違いがコスト差別化の大きな要因です。例えばお客さんが在来のやり方だと200億円かかるものを、事業計画上150億円でやりたいと言うなら、それを実現するためのノウハウとか技術を提供して実現するのが、技術で成り立っている私たちの会社の使命です。

 ただ単にコストカットしてやっているわけでは全くない。きちっとした技術に基づいた単価、金額になっています。あれだけの大きい建物をむちゃくちゃな金額では受注できませんからね。お客さんに納得していただいて、「こういう内容でこの金額ですよ」とちゃんとコミュニケーションしているわけです。

――最終的には赤字にはならない?

 そうですね。企業として生きていくためにはそれなりのコストと内容でないといけません。

――国内建築では、大手とはすみ分けせず、競合していくのですか。

 それはもう、もちろんですよね。お客さんを大事にしながら、社会的に意味のある仕事をやっていく。東京・丸の内のビッグプロジェクトなんかは、社員の技術を上げていけるし、ブランド力にもなる。チャレンジしていくのは当然の話です。

 ただ、各社共に得意分野の色がだいぶ出てきていますから、そういうところはすみ分けもあると思いますけどね。

――戸田建設が建て替える本社も東京駅から遠くない場所です。

 ここ(戸田建設本社)は京橋駅が最寄りで延べ床面積の大きい(10万1500m2)オフィスビルになります。京橋にもオフィスがたくさん提供されていきますが、差別化しないと借り手が付かない。そういう意味で、隣の永坂産業(ブリヂストンの関連会社)のビルはアーティゾン美術館(旧ブリヂストン美術館)が入りました。一緒に「文化」で地域に貢献するエリアとしてまちづくりをしていきます。