学閥の力は、そこに入ることで“実利”を得られるかどうかを左右する。その最たる存在が不動産業界にうごめく大学ネットワークだ。特集「新学閥 早慶・東大・一橋・名門高校」(全19回)の第1回では、慶應義塾大学の「不動産三田会」と早稲田大学の「不動産稲門会」に潜入。そこでどのような情報のやり取りや交流が行われているのかをレポートする。(「週刊ダイヤモンド」2019年7月13日号を基に再編集。肩書や数字は当時のもの)
「三田会限り」が決まり文句
マル秘不動産情報が飛び交う
37万人の卒業生を抱える慶應義塾大学の同窓組織、「慶應連合三田会」――。
その傘下の「職域三田会」(職種にひも付いた三田会)の一つで、現在約900人の会員を擁するのが、「不動産三田会」だ。学閥の王者といわれる三田会の中でも、ビジネス上の“実利”で結び付いた同窓会の筆頭である。
6月下旬、東京都内某所で行われた月に1度の会合、「月例情報交換会」に潜入した。この会合は、慶應出身の不動産関係者にとって、何より欠かせない会合である。
会議室に集まったのは、各大手不動産会社やハウスメーカーの社員に自営不動産業者、不動産コンサルタントなど、およそ100人の老若男女。各人のテーブルには、物件の図面や、売り・買いニーズごとにまとめられた物件資料が山積みにされていく。
参加者たちにマイクが回されると、卒業年次と自己紹介の後に、次々と用意してきたえりすぐりの物件情報を読み上げる。
「A駅徒歩圏で、満室稼働収益オフィス物件を一棟売りで検討しております」
「都内ですでに幾つかの物件を運用中のお客さまが港区で表面(利回り)7%くらいの収益物件を探しております。レジ(住宅)でも商業(施設)でも構いません」
そこに決まり文句のように付け加えられるのは、「三田会限り」という文言だ。つまり、外部への情報漏えいを禁じているわけだ。