連載「新学閥 早慶・東大・一橋・名門高校」(全19回)の第8~13回は地方編。名門大学、名門高校が群雄割拠する首都圏と異なり、地方には地元政官財を牛耳る鉄壁の大学閥、高校閥が存在する。お国柄溢れる各地の最新ネットワークを解剖しよう。第11回は関西編をお届けする。(「週刊ダイヤモンド」2019年7月13日号を基に再編集。肩書や数字は当時のもの)
京大・阪大・神大の三国立大学を頂点に
形成される独自の学閥群
関西の中核都市といえば、京都と大阪、神戸の3都市だが、そこには京都大学を筆頭に、大阪大学、神戸大学といった三つの国立大学が頂点に君臨する(通称、京阪神)。
関東で言えば、東京大学や一橋大学などに匹敵するが、関東と関西で大きく異なるのは、早稲田大学や慶應義塾大学に匹敵する私立大学が存在しないことだ。
そのため、この京阪神に次いで名前が挙がるのが、関西の四つの有名私立大学である関西大学、関西学院大学、同志社大学、立命館大学を総称した、いわゆる「関関同立」となる。
関関同立といえば、関東でいう「MARCH」レベルと同格とされるが、関関同立からすれば、京阪神クラスとの併願先となる場合も多々あるため、MARCHレベルとされることには違和感を覚える向きが少なくない。
実際、京大が君臨する京都では、京大に落ちた学生が同志社大に進学するケースもあり、むしろ同志社ブランドを高めている。
こうした点を踏まえ、京阪神と関関同立の卒業生ネットワークの特徴について見ていこう。
まず、別格の存在といえる京大には、「学閥の形成や強固なOBネットワークは存在しない」と、複数の京大OBは口をそろえる。
「せいぜい医学部ぐらいでしょう。みんなばらばらであえて言えば、それが特徴なのかもしれない」
そもそもの京大ブランドの高さに加え、基本的に卒業後は東西に散らばるので、学閥をつくりにくいという面もあるだろう。
もっとも、同じ高校出身者による強いつながりはある。例えば、「京大の中でつるんでいるのは洛星高校出身者。西陣の老舗の子が多く、のんびりしている感じ」との声がOBからは聞こえてくる。
この西陣の例で言えば、同志社大にもつながる話が興味深い。
古都、京都には、西陣をはじめとして老舗が軒を連ねている。実は、それら老舗の子女たちが通うのが、同志社幼稚園なのだ。そして、同志社大の付属小学校が開校する2006年までは、「幼稚園卒園後は、ノートルダム学院小学校に通うのが通例だった」と、ある同志社大の関係者はいう。
そして小学校を卒業すると、同志社大系列か、男子ならば洛星など、女子ならばノートルダム女学院といった中高一貫校に進学する。つまり、京都の老舗には“ノートルダム閥”があるのだ。
そのような老舗の子女は家業や因習に縛られている。そこから脱するには、「京大に行くしかない」のが実情だという。