ジョンソン首相は、「合意なき離脱阻止法案」に賛成して保守党を追放された議員や無所属議員、野党・労働党を切り崩すことで過半数を確保するとしているが、見通しは不透明だ。

 10月19日、英議会は離脱協定案を採決するため、1982年のフォークランド紛争以来となる土曜日の審議を行った。だが、保守党を離党していたサー・オリバー・レトウィン議員やフィリップ・ハモンド前財務相らによって、離脱手続きを延長する修正案を提出し可決された。

「レトウィン案」と呼ばれる修正案は、離脱協定の正式な批准に必要な立法手続きである「離脱協定法案(WAB)」が成立するまで、英下院による離脱協定案承認を棚上げするという内容だ。10月末の離脱前に立法手続きを終えられず、結局「合意なき離脱」になってしまうことを避けることが目的だ。

 修正案の可決によってジョンソン首相は、EUに対して離脱期限の延長要請を法的に義務付けられることになった。首相はこれに従い、EUに対して離脱期限の延長を求める書簡を送った。

ジョンソン首相が苦しむ
「デイビッド・キャメロンの呪い」

 ジョンソン首相の苦境が続くが、筆者はこれを「デイビッド・キャメロンの呪い」だと考えている。今回ジョンソン首相が追い詰められたのは、議会に反発した首相が下院の解散を求めたところ、下院の3分の2の支持を得られず、解散権を行使できなかったからだ。

 下院の3分の2の同意を得なければ首相が解散権を行使できないということは、キャメロン政権が成立させた「2011年議会任期固定法」に規定されている(第106回)。これは、2010年の総選挙で保守党・労働党の二大政党のいずれも過半数を獲得せず、保守党が自由民主党と連立を組んだ「ハング・パーラメント(宙吊り議会)」となったことで制定された。安定多数を確保できない首相が、解散権を乱用して議会が不安定化することを防ぐ目的があった。