もっと踏み込んでいえば、安倍首相は成長戦略を「支持率維持の道具」としか考えていないことが問題だ。たとえば、かつて経済産業相を務めた世耕弘成氏は、初入閣で経済政策通とはいえず、むしろ自民党の広報戦略を担ってきたことで知られていた政治家だった(第138回)。

 また、「一億総活躍担当相」に起用された経験を持つ加藤勝信氏は、「働き方改革担当相」「女性活躍担当相」「再チャレンジ担当相」「拉致問題担当相」「国土強靱化担当相」「内閣府特命担当相(少子化対策男女共同参画)」なども兼務した。まるで一貫性のなさそうなこれらの担当業務には「国民の支持を受けやすい課題」という共通点があった。つまり、加藤氏は事実上「支持率調整担当相」であり、支持率が下がりそうになったらタイミングよく国民に受ける政治課題を出していくのが真の役割だったといえる(第122回)。

安倍首相の国政選挙連勝は
「究極のポピュリズム選挙」の成果

 安倍政権の「国民不信」がもっと露骨に出たのが、選挙である。安倍政権は、12年12月衆院総選挙(第50回)、13年7月参院選挙(第64回)、14年12月衆院総選挙(第96回)、16年7月参院選挙(第136回)、17年10月衆院総選挙(第169回)、19年7月参院選(第216回)と国政選挙で連勝を続けた。

 だが、安倍政権の選挙戦の特徴は、「アベノミクス」の成果のみをひたすら強調し、政治が取り組むべきさまざまな重要課題について、ほとんど何も語らないことであった。世論が割れがちな憲法改正や外交・安全保障、原子力発電の政策などにについて、徹底して言及を避けたのである。安倍首相は、とりあえず景気さえよくなれば重要な争点はどうでもいいじゃないかという「究極のポピュリズム選挙」を続けた。しかし、国民は容認して圧倒的多数を与え続けたのである(第94回)。

 ところが、安倍政権は選挙に勝利すると、手のひらを返して経済だけではなく、全ての政策について「国民の信任を受けた」と宣言した。そして、「国家安全保障会議(日本版NSC)」設置、「特定秘密保護法」「安全保障法制」などを次々と国会通過させていった。それでも国民はそれを「野党よりまだマシ」と言って、選挙で安倍政権を勝たせ続けたのである。