さらに、渡辺議員は安倍首相とは旧知の仲なので、ひょっとしたら、質問をした裏で、渡部議員と安倍首相が連携して動いているかもしれないと憶測する政治家もいるだろう。

 こうなると、政治家の動きは素早い。いずれにしても今年は災害が続いて被害も大きかったから、割引率の議論がされたことで、公共投資を増やせる理屈も明快になった。

「10兆円真水補正予算」へと弾みがついた形だ。

守勢に回った財務省
本予算で“取引”狙う?

 21日の参議院財政金融委員会で、渡辺議員は財政投融資の制度を使って、地方公共団体がこのマイナス金利の恩恵を受けられるような具体的な提案もしている。

 国がマイナス金利で国債を発行し、それで調達した資金を同じマイナス金利で国が地方に貸し付けるのだ。

 これに対して財務省は、国にはマイナス金利の恩恵があることは認めつつも、地方のためにはやらないという乱暴な議論で反対している。

 マイナス金利での国から地方への貸し出しは、法律が要求している安全確実な方法ではないというのだ。

 しかし、一方で国がマイナス金利で恩恵を受けていることは認めているので、財務省の論法は詭弁にしか聞こえない。

 資金の運用は、調達とのセットで考えるべきで、調達コストも運用コストもともに同じでマイナスであれば、安全確実な運用ともいえる。

 財務省は、借金だけを強調しその裏にある資産を言及しないのといつもと同じ論法で、運用利回りだけのマイナス面を強調し、その裏にあるマイナス金利での調達のプラス面をあえて隠して答弁している。だから、詭弁に聞こえるのだ。

 いずにしても、渡辺議員が国会で質問したことで、財務省は、マイナス金利や高すぎる割引率の問題を突かれると守勢に立たざるを得ないことがわかってしまった。これは政治家を大いに勢いづかせただろう。

 財務省は今後、政治の圧力にどう対抗するのだろうか。

 補正予算案の提出は今の臨時国会ではなく、年明けの通常国会冒頭にして、とりあえず時間を稼ぎ、後は、来年度の本予算の編成で、歳出規模をそこそこ増やしたり、個別案件で政治に配慮したりという「取引」で、大型補正の議論の沈静化を図ろうとするのだろう。

 もっとも、通常国会冒頭での補正予算案提出は、安倍政権にとっては解散の絶好の口実にもなり得るので、財務省の対応は政治的には絶妙だ。

(嘉悦大学教授 高橋洋一)