中国の電子商取引(EC)大手アリババグループが26日、香港証券取引所に株式を上場した。新株の売り出しによる調達総額は875億香港ドル(約1.22兆円)。アリババは6月末時点ですでに1045億元(約1兆6200億円)のフリーキャッシュフローがあり、香港上場でさらに資金力が増したわけだ。いったい、今回調達した1.2兆円を何に使うのだろうか。(ジャーナリスト 高口康太)
香港での上場は
米中対立受けた「保険」
香港市場での初値は187香港ドル(約2600円)と、公募価格の176香港ドル(約2450円)を上回った。アリババは米ニューヨーク証券取引所(NYSE)にすでに上場しており、香港の普通株式とNYSEの預託株式(ADS)は交換可能。このため株価はほぼ想定内だった。米中対立の深刻化を受け、米国では中国企業が上場廃止に迫られる懸念が浮上している。アリババが香港に上場した目的のひとつは、この懸念を見据えての保険的行為と見られている。
アリババは上場目論見書の中で、調達資金の使途を「ユーザーの増加、他企業のデジタル化転換支援、イノベーションの継続」といったあいまいな言葉でしか表現していない。だが目論見書をつぶさに読み、アリババの現在の事業概要を知ると、資金調達の狙いがすけて見える。