アリババは目論見書で、自社の事業領域を次のように分類している(図参照)。
上部の薄いオレンジ部分は主にキャッシュの稼ぎ手としての事業。下部の濃いオレンジ部分は他の事業を支えるインフラ的なサービスで、物流の菜鳥(ツァイニャオ)、広告の阿里媽媽(アリママ)、金融の〓蟻金服(アントフィナンシャル、〓の文字は虫偏に馬)、クラウドコンピューティングなどの阿里雲(アリババクラウド)が並ぶ。
上部に並ぶ稼ぎ手事業のうち、「零售商業」(リテール)と「生活服務」(ライフサービス)は中核的リテール。天猫(Tモール)や淘宝(タオバオ)などのECプラットフォームのほか、盒馬鮮生(フーマーフレッシュ)などの小売りチェーン、1688.com卸売プラットフォーム、出前代行の餓了麼、口コミ評価サイトの口碑が属する。
「数字媒体和娯楽」(デジタルメディアとエンターテイメント)には動画配信サイトの優酷、東南アジアや南アジアで強いモバイルブラウザのUCブラウザー、映画制作会社、音楽配信サイトなど。
「創新業務」(イノベーション事業)は地図アプリの高徳地図、ビジネスチャットアプリのDing Talk、スマートスピーカーのTモールジニーが並ぶ。
上記にクラウドを加えたでは事業セグメントごとの収益(2019年6~9月期の実績)はどうなっているか。
・中核的リテール 売上高1012億2000万元、経常利益320億6900万元
・デジタルメディア・エンターテイメント 売上高72億9600万元、経常損失33億2700万元
・イノベーション事業・その他 売上高12億1000万元、経常損失30億7300万元
・クラウド 売上高92億9100万元、経常損失19億2800万元
つまり、中核的リテール以外はすべて赤字なのである。ここから、本業であるECで稼いだ資金を他事業のシェア拡大に突っ込むというアリババの戦略が露わに見える。