セールスフォースCTO、ピーター・ハリス氏
Parker Harris 1999年春、マーク・ベニオフらとともにセールスフォース・ドットコムを創業。それ以前もクラウド・コンピューティング技術を扱うベンチャー企業の創業・経営に従事し、営業支援自動化の技術開発に携わった。現在はデザインから開発、サービス提供まで、全製品の戦略を統括する立場にある Photo by Chiyomi Tadokoro

企業が成長することは難しい。長期にわたって成長し続けることは、もっと難しい。顧客情報管理(CRM)最大手の米セールスフォース・ドットコムは今年創業20周年を迎え、もはや新興企業とは言えないステージにある。しかし企業買収を含め成長戦略は依然活発で、この3年で売上高が1.6倍、営業利益も2.6倍と業容拡大が続く。株式市場もここ1年は最高値の更新が続き、直近では1428億ドル(約15.6兆円、11月29日の終値ベース)に達している。なぜ成長の踊り場を迎えず、伸び続けられるのか? 今秋来日した、共同創業者のパーカー・ハリス最高技術責任者(CTO)に聞いた。(ダイヤモンド編集部 杉本りうこ)

「イノベーション部門」は
実は大して重要じゃない

――創業20周年を迎えても成長の勢いが衰えません。自社や顧客を変革し続け、成長力を維持できる秘訣は何でしょうか。

 まず非常に重要なのはビジネスであれ技術であれ、イノベーションとは特定の場所から生まれるものではないということです。「イノベーション・オフィス」や「イノベーション部門」などと呼ばれるところから必ず、革新的なものが生まれるわけではないのです。

 ですから私たちは、イノベーションに繋がるアイデアを全社的に探し求めています。そしてそのために技術を活用しています。セールスフォースのサービスの1つに、企業向けソーシャル・ネットワーキングツールのChatter(チャター)というものがあります。私たちはこれを使って日々、あらゆる社員からアイデアを集めています。

 実はチャターそのものがイノベーションでした。元々はマーケティング部門が発案したものであり、技術部門から生まれたわけではありませんでした。技術部門からはむしろ、「これはひどいアイデアだ」、「誰がこんなものを必要とするのか」という声が上がったのです。抵抗勢力のようなものです。

――どの企業でも起こりそうな出来事ですね。

 このように、革新的なアイデアは社内のどこででも生まれ得るのです。ですから多様なアイデアを拒絶せず、努めて心を開いて、新しい案に常に耳を傾けるようにしなければなりません。またこの姿勢は、対社員に留まりません。セールスフォースは多くの企業に投資しているのですが、投資先からもイノベーションのアイデアは得られます。顧客からも同様に、学ぶことばかりです。

 要するに、イノベーションを「自らの手で起こせる」かどうかは、実際にはそんなに重要ではないのです。それよりもあらゆるアイデアに耳を傾ける初心を持ち続けることのほうが、イノベーションや生産性においてはるかに重要なのです。