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中国は確かに知財を
盗んでいる。だがそれでも…

―― 一方で、同質な集団が心地よいのは人間の本質でもあります。似通った人と密室で議論する、いわゆる「ボーイズクラブ文化」のようなものは、どこにでも生まれがちです。

 そう、私たちは誰しも偏っているのです。私も偏っているし、あなたもそう。重要なのは、偏見を持っていると意識することです。意図しないままに、誰かを会議に含んでいなかったり、ある意見に注意を払っていなかったりするものです。企業においてはそういう無意識の偏りがあることを理解しなければなりません。その上で、経営層自らがその偏りに対して正しい姿勢を持つ必要があります。

 セールスフォースには最高平等責任者というポストがあり、トニー・プロフェットがベニオフCEO直属の役員としてその任を果たしています。ボーイズクラブであれガールズクラブであれ、あらゆるクラブ的な文化を終わらせるためには、リーダーシップが重要なのです。トップ層からイニシアチブを持って、組織全体に多様性の重要さを浸透させていく必要があります。そして折々、組織がどれくらい多様になったかを、数をもって測らなくてはなりません。

――少し違った質問です。米国政府は企業に対して、米中間の研究開発や投資活動を制限しようと試みています。2つの大きな経済圏をデカップリングしようとしているといえますが、グローバル企業として、この変化をどう受け止めていますか。

 確かにあなたが言うように、世界はより愛国主義的で、より分断される方向にあるようです。そして中国によって、知的財産やイノベーションの成果が盗まれているという事例は確かに存在すると思います。それによって、不公平な競争条件が(米国企業に)もたらされているとも思います。

 ただその上で私は、中国とのビジネスに大きな商機があることも指摘したい。慎重になる必要は確かにありますが、中国とビジネスはしていきたい。セールスフォースは中国のアリババグループと協業関係にあり、そのことについて非常にわくわくしています。

 先に話したように、陣営を作ったり全体を分断したりすることは、本質的に良いことではないのです。たとえば科学者のコミュニティでは、世界中でイノベーションが起こり、知的財産が生まれています。そこで人々が愛国主義的になって連携しなければ、イノベーションは停滞します。気候変動は米国だけの問題でもなければ、中国や日本の問題でもありません。世界的な問題であり、一緒になって取り組まなければなりません。

 私たちは世界的な問題を解決するために、国を超えて協業する上での信頼関係を作らなくてはなりません。今はある種の後退期であって、少し分断が進んでいるように見えるかもしれません。ですが個人的には、これが長期的な方向性だとは考えられません。私は事態を楽観的に見ていますよ。

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