構造改革の狙いは人員整理だけではありません。従来の「小売業」という感覚を忘れなきゃいけない。(商品開発や製造など)メーカーのような機能とマーケティング機能がより重要です。既存の社員にはそれを勉強してもらうし、中途採用も増やします。
一方で加盟店対応をする社員には、より一層地域に根差し、加盟店を理解して貢献することが求められます。(沖縄県のエリアフランチャイズの)沖縄ファミリーマートは、7月にSEJが出店し、近隣の店舗はやや影響を受けましたが、全体として既存店の売り上げは増えています。沖縄ファミマが従来取り組んできた、地元企業や団体とベタベタに組んだ地域“異常”密着の商品開発やマーケティングの成果です。本部がチェーン一律でやり方を押し付ける時代はもう終わりです。他の地域でも経営判断を委ねたうえで、こうした施策ができるようにしていきます。
例えば兵庫県の淡路島では従来、担当の本部社員が神戸市から自動車で明石海峡大橋を渡って島内の加盟店を回っていて、効率が悪かった。そこで6人の社員が島に住むようにしました。加盟店オーナーと一緒に地元の祭りに参加したり、釣りをしたりと綿密なコミュニケーションを取るようにすると、オーナーの満足度が高まり、既存店の客数も増えました。
人口約13万人の淡路島は、ある意味で閉じられたコミュニティーのため、住民の法事などの予定もすぐわかる。効果的な営業活動ができ、ウナギの蒲焼きの注文も非常にいい。淡路島ではトライアスロンの大会があり、私と社員で参加しました。社員は3人ずつの2チームで、1人ずつラン、バイク(自転車)、スイムの3種目に分かれ、私は3種目とも1人でやって彼らに勝った(笑)。彼らには「13万人の顔と名前を全部覚えるぐらい、もっと激しく地域に密着しろ」と言っています。
――ファミマのキャッシュレス決済システム「ファミペイ」で、11月から始まった「マルチポイントサービス」では、カルチュア・コンビニエンス・クラブの「Tポイント」に加え、楽天の「楽天スーパーポイント」、NTTドコモの「dポイント」が選べます。これによってポイント相当額の負担が増加するとの声が加盟店から上がっています。
加盟店のポイント相当額の負担は増えますが、ポイント付与による店舗への送客効果も期待できます。キャッシュレス決済は不可欠なサービスで、われわれはSEJやローソンに先駆けて導入しました。この面で、他のチェーンに劣後するわけにはいきませんし、通信大手などとの連携がなければ、大規模なポイント付与のキャンペーンもできません。決済手数料負担を下げるなどの企業努力をわれわれもしないといけませんが、これから出てくる(マルチポイントサービスの)数字を見て、明らかに加盟店に多大なコストが生じる状況であれば対応を考えます。
加盟店側に不満があるとすれば、やはり経済的に潤っていないということが根本的な原因です。今回打ち出した施策で問題が解消したとは思っていません。立ち止まることなく加盟店の意向を聞いていかないといけないと考えています