ところが、このEU指令と比較すると、取引透明化法案では明らかに行政が前に出すぎているように見受けられます。

 EU指令では、行政(EU委員会)が行うこととして規定されているのは、この指令が取引環境にもたらすインパクトのモニタリングと、それに関連した情報の収集だけです。ちなみに、情報収集の延長として、3年ごとに指令の内容を見直す際の参考とするために大手IT企業から“情報を収集するかもしれない”(”may seek to gather information”)とされていますが、行政が大手IT企業に関与するのはこの部分だけです。

 それと比較すると、取引透明化法案では、(1)については情報開示されない場合は行政が勧告・公表し、是正されない場合は措置命令することになっています。(2)に関して必要な措置が取られない場合も、行政措置を講じるとしています。そして最悪なのは(3)で、行政は大手IT企業に対して、(1)や(2)の運営状況について自己評価を付したレポートを定期的に提出させようとしています。

本来なら独占禁止法で
対応できるのではないか

 本来は独占禁止法で対応すべき部分について新法を制定し、欧州の同様の規制と比較しても過剰に行政が大手IT企業のビジネスに関与しようとするというのは、典型的な過剰規制ではないでしょうか。

 ちょうど今週、楽天が、楽天市場に出店する企業に対して“送料を無料とする”方針を打ち出そうと考え、これが独占禁止法に抵触しないか公正取引委員会に相談したところ、独禁法違反の恐れがあるとの回答があったと報道されていましたが、本来はこのように独占禁止法の枠内で対応できるはずなのです。

 それに加えて問題なのは、取引透明化法案の主務官庁が、独禁法を所管する公正取引委員会ではなく、経産省が中心になるということです。それでは独禁法で対応できるにもかかわらず、独禁法とは別枠の法律で規制することになるので、典型的な二重行政になってしまうのではないでしょうか。