『週刊ダイヤモンド』1月18日号の第1特集は「納得の葬儀・寺・墓」です。近年、葬儀業界で存在感を示すのがネット系葬儀社。安価、明朗会計を武器に、業界の勢力図を塗り替えつつあります。葬儀の簡素化も背景に葬儀単価の低下が進み、既存勢力はあえぐのみです。

高齢化でニーズが増えても葬儀業界は苦戦

零細葬儀社「下請け化」の苦境、ネット系の価格破壊に打つ手なしPhoto:PIXTA

 高齢化が急速に進む日本において数少ない「成長産業」と目されているのが、葬儀業界だ。厚生労働省の推計によると、2019年の死亡者数は137万人で戦後最多。この数は増加の一途をたどり、40年には年間約168万人が死亡すると予測されている。

 となれば葬儀ニーズもうなぎ上りで、さぞ業界が沸いているに違いないと思うが、そうではない。「葬儀会社の淘汰は一層激しくなる」と、ある葬儀業界関係者は嘆息する。いま葬儀業界は激動期にある。

 その台風の目は、インターネット系葬儀社に代表される異業種だ。

 09年、小売り大手のイオンが「イオンのお葬式」で参入したのを筆頭に、「小さなお葬式」を手掛けるユニクエスト、「よりそうのお葬式」を展開するよりそうといった、ITなどを武器にした新興企業が続々と葬儀サービスを立ち上げてきた。18年にはDMM.comが終活ねっとを買収して葬儀業界に参入するなど、旧来型の葬儀会社のアンチテーゼとして、新興企業が市場や消費者の間で存在感を示している。

 なぜネット系葬儀社が話題と人気を集めているのか。

 その理由は、明瞭な価格体系と価格の安さにある。