「自然葬」を希望が2割、「葬式不要」が3割──。家族形態の変化も影響し、墓と葬式に対する伝統的な意識が薄れており、簡素化と多様化が進む。(週刊ダイヤモンド2016年8月6日号特集「どう生きますか 逝きますか 死生学のススメ」より)
5月のある日、東北地方に住む85歳の田野陽子(仮名)は埼玉県熊谷市にある寺、見性院を訪ねた。「送骨」、つまり郵送(ゆうパック)で遺骨を送れば、墓の継承者がいなくても永代供養してくれるサービスがあると聞き、永代供養塔などをその目で確認したかったのだ。
田野は、今ある墓を処分する「墓じまい」を考えている。実家は何百年と続く旧家。旧墓と新墓があり、旧墓はすでに整理した。問題は新墓だ。
そもそも、子供たちは地元を離れており、将来にわたって墓の世話をすることは大変だろう。それならば、墓じまいして、墓の引っ越しである「改葬」を行いたい。墓に入った8人分の遺骨を見性院に送骨し、永代供養を頼みたいと考えている。
旧家の墓の歴史を自分の代で終わらせることにちゅうちょはあるが、実家のある土地に対して思い入れがない自分だからこそ可能だ。子供の代に負担を押し付けるのは申し訳ない。
見性院の住職である橋本英樹は、近年、「送骨が急激に増えてきた」と言う。背景に田野のような改葬ニーズの高まりがある。
見性院では、永代供養自体は2009~13年の5年間で145件だったが、14年は年間133件、15年は270件と倍増。今年は7月までで256件。倍々ゲーム状態である。