また、零細な葬儀業者だけでなく、大手の冠婚葬祭互助会(互助会)もあおりを食っている。
もともと、互助会は葬儀費用のベースが高めだ。グレードの高い葬儀品を提案しているだけでなく、会員募集の費用といった、互助会システムを維持するための費用が葬儀価格などに織り込まれている。
さらに、いまやニーズに合わなくなりつつある大型の会館といった資産も固定費としてのしかかっている。「ネット系葬儀社のような価格帯はとてもじゃないが提示できない」(別の葬儀社社長)のだ。
互助会でもネット系葬儀社の葬儀を「下請け」として引き受けている例は多いが、同じ自社会館を使用していながら、料金が大きく違う二つの葬儀を行えば、会員の不満にもつながりかねず、互助会の悩みの種となっている。
ネット系の弱点は?今後はサービスの質で勝負
もちろん、こうしたネット系葬儀社の台頭は消費者ニーズに合わせた変化だ。既存の葬儀業者に経営努力が足りていない部分が多いこともあり、今後もネット系葬儀社はますます成長するだろう。
だが、あらゆる葬儀がネット経由になるかというとそうでもないようだ。
「ネット系葬儀社のシェアは推計で5~8%程度で、まだそう多くはない。喪主世代がネットを使いこなせていなかったり、必ずしも低価格のニーズだけではなかったりするなど、ネット系葬儀が広がるまでには一定のハードルがある」と、葬儀社などを傘下に持つライフアンドデザイン・グループの村元康社長は分析する。
また、17年以降、イオン、ユニクエスト、よりそうなどネット系葬儀社各社が「追加料金不要」といった表示をしていたにもかかわらず、実際には追加料金が必要なケースがあったとして、消費者庁から措置命令を立て続けに受けるなど、消費者の信頼を損なうような事態もあった。
今後は、価格面だけではなく、満足度をいかに高められるかがネット系葬儀社の戦略の分かれ目となるだろう。