最近の米国とイランの関係悪化は、トランプ大統領が「イラン核合意」から一方的に離脱したためだ。

 イランの核開発については、2015年7月14日、米、露、英、仏、中、独の6カ国がイランと最終合意に達した。ウランの濃縮は発電用の3.67%以下とし、濃縮用の遠心分離機は3分の2を削減する、などが定められた。

 国連安保理は同年7月20日、この合意を承認。イランに対する経済制裁の解除を決議した。IAEA(国際原子力機関)は翌16年1月、イランが核合意を完全に履行していることを確認し、経済制裁解除の手続きが進んでいた。

 ところがトランプ大統領は18年5月8日、核合意からの離脱を表明、イランに対し「最高水準の経済制裁」をかけるだけでなく、他の諸国に対しても「イランと取引すれば制裁する」と宣言した。

 イラン核合意達成にはオバマ前政権が力を入れ、6カ国とイランの長年の努力で実現、もちろん米国も署名したのに、突然それと正反対の行動を取るのは暴挙だ。

 また、他の国々に経済制裁に加わるよう強制する「二次的制裁」は、国連決議に基づくものならとにかく、米国が定める国内法を領域外に適用して、他国民がそれに反すれば在米資産を凍結(事実上は没収)することは法的にも疑問が大きい。

 ましてイランに対する経済制裁の解除は国連安保理も決議をしているのに、米国はそれと正反対の行動を取るのだから無法と言わざるを得ない。

 イランは当然それに反発し、ウラン濃縮を4.5%に引き上げるなど対抗措置を取り、経済制裁解除の履行を迫るカードとした。

 だが、核兵器用のウランは90%以上の純度が必要で、医療用のアイソトープでも約20%の純度だ。4.5%濃縮では発電用の効率が高まる程度でしかない。

 ソレイマニ司令官の暗殺後イランは怒りを示すため、核合意を無視して開発を始める姿勢を見せた。このことが「第3次世界大戦」とか「核戦争」とかをメディアに思い起こさせたのだろう。

 だが本来、イラン核合意は、イランが核兵器開発に踏み切っても、その完成には1年以上を要することを狙って定められ、イランが核合意を履行してきたことはIAEAが確認している。

 したがってイランが核兵器を現在保有していることはありえない。

 もしイランが本当に核兵器開発を始めれば、米国は大規模な航空攻撃、ミサイル攻撃により核施設を破壊するだろうから、イランと米国の「核戦争」の可能性はゼロに近い。