あべのハルカスと『哲学と宗教全史』
担当書籍は『哲学と宗教全史』『ザ・コピーライティング』『志麻さんのプレミアムな作りおき』『カヨ子ばあちゃん73の言葉』『第一人者が明かす光触媒のすべて』『1坪の奇跡』など。『社員15倍!見学者300倍!踊る町工場』で処女作21作連続重版へ挑戦中。生涯142冊、重版率8割。野球歴14年。技術と精神がドライブがかった本を、孫の世代まで残る本を、光のあたらないところに光があたる本を。
――『サピエンス全史』や『21Lessons』も、ある程度の知的体力がないと、最後まで読みきるのはしんどいかもしれませんね。
百々 そうですよね。杖をついた人だと、「あべのハルカス」の最上階まで上がれない(笑)。
――あの大阪随一の絶景を誇る、地上300メートル、日本一の超高層複合ビルですね。
百々 でも、出口さんの『哲学と宗教全史』だったら、
もしかしたら、階段でも
あべのハルカスの展望台まで
行ける可能性があるかもしれない。
読者にそんな希望を与えてくれる。
そう、フッと気がついたら、
こんなところまでのぼってきたのかと。
あの本のすごさのすごみは、そこにあるんです。
――僕の編集方針としては、難しそうな哲学や宗教を、初学者にもわかりやすく、その道を極めた人からもよくここまで書けたなあ、と感心していただく本にすることでした。
たった一行、わかりにくいために、読むのやーめたとならないよう、原稿段階で不明瞭な表現は、出口さんにくらいついて直したつもりなのですが、どこまでそれが読者に通じたかはわかりません。僕も哲学や宗教の本を編集するのは初めてだったので。
百々 だからよかったんですね。
――というのは?
百々 素人目線で出口さんに質問するから、わかりやすく深みのある本になったのだと思います。この道に詳しい編集者なら、読者のわからないことがわからなくなる。
けれど、寺田さんのように、わからないことをわからないとはっきりいうにはある種、勇気がいる。「おまえ、こんなこともわからないのか」と著者にいわれるリスクがあるから。
でも、寺田さんは、そんなのおかまいなしに、出口さんに質問し続けた。それに対し、出口さんはめちゃいい人だから、丁寧に答えてくれた。著者と編集者の面白い化学反応だと思います。
――ありがとうございます。ただ、僕はわからないことを放置しておくのが、どうしてもできない性質(たち)なだけですよ……。