多摩地区唯一の中学併設校「都立武蔵」も高校からの募集を取りやめる

前年比志願者減が目立つ都立中高一貫校

 2020年の首都圏公立中高一貫校の志願者数が出揃った。3ページ目に一覧表を掲載するが、全体的に2019年に比べて志願者数は減少傾向にある。私立中高一貫校では受験だが、公立校の場合は適性検査ということで受検と称している。

 中学校を併設して東京都立で初めて中高一貫校になったのは、前身が旧制第1高等女学校である下町の名門、白鷗高校だった。2005年のことである。最初の卒業生が出た2011年に東京大5人合格という華々しい実績を上げたことで、都立一貫校への注目が高まった。

 2006年には旧制5中の名門校「小石川」が、まだ耳慣れなかった中等教育学校に衣替えしている。これは中学に相当する最初の3年間を前期課程、高校に相当する後の3年間を後期課程と呼び、後期課程からの募集は行わない完全一貫校だ。

 私立一貫校の場合、義務教育ではあっても中学では授業料などが別途徴収される。その点公立であれば普通の中学校と同様、授業料はかからない。学費の心配が不要なこともあって、近隣の小学生が記念受験する例もあってか、公立一貫校の志願者倍率は総じて高い。

 東京では、旧学区の二番手校中心に一貫化している。中等教育学校が小石川、桜修館、立川国際、南多摩、三鷹、九段の6校、都立中学校が白鷗、両国、武蔵、富士、大泉の5校となっている。

 都立一貫校は1月15日に出願が締め切られた。千代田区に移管された九段中等教育学校と共に、入学者選抜のための適性検査はいずれも2月3日に行われる。

 長らく公立一貫校の状況を見つめてきた若泉敏・森上教育研究所特任研究員は、志願者数の変動について、5つの要因を指摘している。

(1)進学塾による進路選択指導の影響
(2)親の学校選択判断基準の変化(特色ある教育よりも、適性検査問題の難度で考える)
(3)大学志望校選択や私立大付属校人気に見られる親の安全志向
(4)男子受験生の挑戦する気概の弱さ
(5)少子化による受検生の減少傾向

 これらの要因について補足すると、(1)では公立一貫校に力を入れてきたena(エナ)に志望校を分散化させる傾向が見られる点、早稲田アカデミーが小石川を筆頭に難関校への取り組み(私立受験生の併願)を進めている点などが挙げられる。

(2)に関しては、適性検査IIIまで課す5校のうち、試験時間45分の小石川・武蔵・大泉と同30分の両国・富士で、難度はそれほど変わらないものの、比較分析していない親には前者の問題が難しく感じられるようで、男子志願者は減少した。その一方で後者の富士の男子は大きく増加している。