「プロダクト・マーケット・フィットとは、事後の視点から後付けするもの」と語る、シリアル・アントレプレナー(連続起業家)の小林清剛さん。数々の起業家から「シリコンバレーの兄貴」として慕われる小林さんに、シニフィアン共同代表の朝倉祐介がシリコンバレーの魅力や、プロダクト・マーケット・フィットに対する考え方について伺いました。

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シリコンバレーは天下一武道会

朝倉祐介(シニフィアン共同代表。以下、朝倉):小林さんは2011年に、スマホ向け広告事業を手がけていた「ノボット」をイグジットして、6年前からシリコンバレーに拠点を移されましたね。日本のスタートアップ関係者や、アントレプレナーの中でも、シリコンバレーに興味を持っている方は多いと思いますが、経験者であり今も在住されている小林さんから見て、シリコンバレーとは改めてどんな場所でしょうか?

小林清剛(Chomp株式会社代表取締役CEO。以下、小林):起業することを考えた時に、シリコンバレーは天下一武道会のような場所です。野球で例えるとしたら、メジャーリーグのような場で、日本はそれに比べると別のリーグのような体感です。シリコンバレーには、GoogleやFacebookもあり、そうしたプロダクトを作った人達もいて、世界中から優秀な人達が集まっていて、尚且つ投資家の数も多いので、シリコンバレーから生まれているプロダクトの数は非常に多いのです。

朝倉:起業環境においては、シリコンバレーをメジャーリーグだとすると、日本は地方独立リーグくらいの差があるかもしれませんね。

小林:そうですね。全く別物かもしれません。競争環境で考えると、単純な数値化をするのは難しいですが、シリコンバレーのほうが20倍くらいは競争が激しいのではないでしょうか。特に違う点は、米国と比べると日本人は画一的なので、日本ではマーケティングでプロダクトを広めやすいこと、また、モバイルアプリのアーリーアダプターとしての利用者数が少ないことです。日本でモバイルアプリをアーリーアダプターとして熱心に利用する人の数は、おそらく1000万人はいないですよね。数百万人くらいじゃないでしょうか。

朝倉:そのくらいの数かもしれませんね。アーリーアダプターの数にもどこかで壁を感じますよね。

小林:数が少なければ、マーケティングにかかる費用も抑えられます。数百万人をターゲットとしたら、おそらく数億円で十分でしょう。

朝倉:そしてまた、こうしたアーリーアダプターが関東平野に集中していますしね。

小林:日本において、新しい市場では特に、新しいプロダクトがマーケットシェアやマインドシェアを取るのは意外と容易です。市場の黎明期で、ある程度のマーケットシェアを得ることができれば、あとはその市場が成長していくに連れて、事業も勝手に伸びていくことが多いです。

一方で、人種も所得も多様な米国においては、そういったことは難しいです。米国ではまずプロダクト・マーケット・フィットを合わせにいってからグロースしなければ、事業の存続は困難です。